企業・自治体・警察関係者のための暴力団排除条例入門

後藤 啓二著
2012年5月18日 発売
定価 2,860円(税込)
ISBN:9784492533109 / サイズ:サイズ:A5判/ページ数:272


はじめに


 

2011年10月に東京都暴力団排除条例が施行され、全国47都道府県で暴力団排除条例が施行されました。暴力団排除条例は、自治体の公共工事や民間の経済取引から暴力団を排除するために、取引に際しては暴力団排除条項の導入を義務づけ、暴力団を利用する取引や暴力団の活動を助長する取引を行うことを禁止し、違反には勧告・公表等の制裁が科せられることを主な内容とするものです。 最近暴力団等の反社会的勢力は、身元を隠して企業に接近し取引関係に立ち、不当要求を行う事案が目立っています。企業が暴力団等と取引関係に立ったり、不当要求に応じた場合には自社が損害を被るのみならず、コンプライアンス意識のない企業だと非難され、監督官庁からの処分、公共工事からの排除、取引先の喪失、社会からの信用失墜等リスクがきわめて大きなものとなり、最悪の場合には、上場企業でも短期間で倒産する事態も決して珍しくありません。



暴力団排除条例の施行により、企業が反社会的勢力と関係を有するリスクはさらに大きなものとなりました。暴力団排除条例に違反することによりますます大きなダメージを被ることとなってしまいます。大企業、上場企業を含めて企業の存続にかかわるリスクとなったといっても過言ではないでしょう。 本書は、何が規制対象かよくわからないといわれる暴力団排除条例を詳しく解説するものですが、その前提として最近の暴力団等反社会的勢力による企業への接近の状況を説明するとともに、暴力団等と取引関係に立たず、不当要求に毅然と対応するための体制の整備のあり方について説明します。



著者は、1982年に警察庁に入庁し、本庁、都道府県警察、内閣法制局等に勤務の後、2005年5月、内閣官房(安全保障・危機管理担当)の内閣参事官を最終ポストとして退官しました。警察在任中には、暴力団対策法の立案、証券取引からの暴力団の排除の推進に関与しました。内閣官房では国の危機管理のあり方について調査検討する立場についていました。弁護士として、主として、暴力団等反社会的勢力対策、企業・自治体のコンプライアンスやリスク管理、重大事故・不祥事発生後の危機対応等の業務に従事しています。



本書は、そのような著者の経験を踏まえ、暴力団排除条例の詳しい解説と条例の施行を踏まえ重大な課題に直面している企業について、課題克服のためコンプライアンス及びリスク管理をいかに浸透させていくか、あるいは危機発生時にいかに的確に対応していくか、について述べたものです。また、暴力団の排除は自治体にとって企業以上に求められるものであることから、暴力団排除条例の理解や暴力団排除のための取組みは自治体にとっても必要なものであることは言うまでもありません。本書では自治体の取組みについても、適宜触れております。



企業や自治体、そして、条例の解釈・運用に当たる警察の方々の参考となれば幸いです。



 2012年4月    後藤啓二


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概要

暴力団排除条例について、企業・団体総務担当者向けに、条例の背景、ねらいと概要、具体的な対応まで解説。どこまでが「セーフ」でどこからが「アウト」なのかがわかる。元警察官僚・暴力団対策法立案者による入門書。

目次


第1部 反社会的勢力リスクの高まりと必要な対策
    ――反社会的勢力の企業をめぐる動向と対策の必要性

   第1章 反社会的勢力の企業をめぐる最近の動向
   第2章 対策の必然性
   第3章 増大する反社会的勢力リスクとダメージの拡大

第2部 Q&Aでわかる暴力団排除条例

   第4章 条例の目的・概要
   第5章 規制される「暴力団」の範囲
   第6章 利益供与規定について
   第7章 暴力団排除条項について
   第8章 不動産の譲渡等における措置、
       祭礼・イベント等の運営における措置
   第9章 公共事業等からの暴力団の排除

第3部 内部統制システムの整備

   第10章 基本方針の確立
   第11章 不当要求に毅然と対応するための体制の整備
   第12章 反社会的勢力の取引からの排除のための体制の整備
   第13章 取締役、社員の安全の確保
   第14章 効果的な運用
   第15章 不当要求・取引先が反社会的勢力と判明した場合などの対応

第4部 立法措置の整備への提言

   第16章 暴力団等反社会的勢力に対する買収防衛策の整備等

 

著者プロフィール

後藤啓二
ごとう けいじ

弁護士、後藤コンプライアンス法律事務所代表。
1959年神戸市生まれ。東京大学法学部卒業。1982年警察庁入庁、内閣法制局参事官補、大阪府警察本部生活安全部長、愛知県警察本部警務部長、内閣参事官(安全保障・危機管理担当)を歴任。2005年警察庁を退官、弁護士登録。

警察庁勤務時、暴力団対策法の立案、証券業界からの反社会的勢力排除に従事。弁護士として、企業・自治体・病院・学校等のコンプライアンス、リスク管理、不祥事発覚時の危機対応、反社会的勢力対策等の企業法務のほか、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」顧問弁護団、「児童ポルノを許さない社会を実現するための弁護士フォーラム」代表幹事を務め、児童ポルノ問題、子ども虐待、犯罪被害者支援等に取り組む。

著書に『企業コンプライアンス』(文春新書)、『日本の治安』(新潮新書)、『法律家が書いた子どもを虐待から守る本』『リスク要因からみた企業不祥事対応の実務』『実践病医院コンプライアンス』(以上、中央経済社)、『なぜ被害者より加害者を助けるのか』(産経新聞出版)などがある。