週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌。

担当記者より
2022年8月6日号
2022年8月1日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】独走トヨタ 迫る試練

世界販売台数で独走し、前期にも過去最高益を更新するなど、自動車産業の覇者にして日本経済を牽引するトヨタ自動車。そんな独り勝ち企業も脱炭素という変革期に、生き残りを懸けた試練に直面しています。本特集ではサプライヤーとの間に隙間風の吹く「生産」、グループの結束力を問われる「アライアンス」、ディーラー選別が始まった「販売」、それぞれの内幕に迫りました。同社初の量産EVの前途多難な船出、不動産会社が株を1兆円保有する複雑極まるグループ統治、豊田章男社長の後継レースの行方も描きました。
 

【第2特集】スタートアップ国策支援の号砲


スタートアップ振興を国の成長戦略に据える動きが起きている。官民の攻防を追った。
 

担当記者より

特集「独走トヨタ 迫る試練」を担当した木皮透庸です。「トヨタの出す生産計画を信じられない」。昨年11月、サプライヤーへの取材で聞いた声がこの特集の出発点です。トヨタの生産計画は業界随一とも言われる精緻さを誇り、それこそがトヨタの強さでもあるのになぜ。当時は東南アジアでのコロナウイルス感染拡大による急減産が続き、サプライヤーも大変な思いをしていた時なので不満の一つも言いたくなるなどと、今思えば楽観的に考えていました。

しかし、その後も不安定な生産が続きます。トヨタは前月20日頃に当該月の生産計画を確定させますが、そのタイミングで急減産を伝えられてもサプライヤーは急に生産要員を減らせません。結果、サプライヤーの中には部品を生産して在庫が溜まるところも。「トヨタの出す計画から割り引いて自社の生産計画を作らないと損失が出る」など悲痛な声が上がる事態になったのです。

販売現場も混乱に陥ります。コロナ禍からの経済回復に伴う新車需要が強く、トヨタでは受注残が膨張。国内では納車まで1年を超える車種も現れ、系列販売会社の社長は「顧客に何度も納期が長引くことを伝える営業スタッフは心理的に相当辛い」と現場の苦労を語ってくれました。販社からのプレッシャーも強く、トヨタはある意味で「強気」とも言える生産計画を立てたものの、半導体が確保できずに急減産。この繰り返しでサプライヤーと販社の不満はかつてないほど高まっています。

自動車は部品3万点の集合体。サプライチェーンが疲弊すると、製品の安全性や品質のリスクが高まります。安全性や品質の問題が自動車メーカーにとって致命的なことは、米国で大規模リコールを経験したトヨタは誰よりも理解しているはずです。だからこそ、今いちど立ち止まって考えて欲しい。そんな思いがこの特集の底流にあります。自動車産業に携わっている方はもちろんのこと、そうでない方にもぜひお手に取っていただきたいです。

担当記者:木皮 透庸(きがわ ゆきのぶ)
自動車業界、物流業界の担当を経て、2019年1月から自動車業界を再び担当。主にトヨタ自動車やマツダをフォローしている。1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。テレビ局などを経て、2014年東洋経済新報社に入社。日本経済活性化のヒントを探すべく、日々取材にいそしんでいる。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
独走トヨタ 迫る試練
トヨタの役員・幹部体制 生産領域を管掌する執行役員が不在に
注目集まる長男大輔氏の動向 章男社長後継レースの行方

試練1 生産
サプライヤーとの間に吹く隙間風 幻の「年間1200万台生産」
[インタビュー]責任者が語る 生産・調達本部長が見た新常態
「われわれとサプライヤーは一心同体」 トヨタ自動車 生産本部長 伊村隆博
「1100万台は生産能力の確認」 トヨタ自動車 調達本部長 熊倉和生
サプライヤーが募らせる不満 生産混乱は日産・ホンダも
常態化する可能性も まだまだ続く半導体不足

試練2 アライアンス
子会社日野、痛恨のエンジン不正 問われるグループの結束力

試練3 販売
ついに始まったディーラー選別 進む販売体制の締め付け
販売で新たな試み開始も模索続く トヨタ初のEVは多難な船出
不動産会社が株を1兆円保有 複雑極まるグループ統治
富士山麓で進む2つのプロジェクト トヨタ 未来づくりの全貌
[エピローグ]“EVだけ”の潮流にあらがうトヨタ 「全方位戦略」で勝てるのか

第2特集
スタートアップ 国策支援の号砲
政府内に「司令塔」がひしめく矛盾
[インタビュー]
「優先購買枠の設置で巻き返しを」
日本ベンチャーキャピタル協会代表理事(会長)インキュベイトファンド(代表パートナー) 赤浦 徹
「政府系ファンドに“プロの目”を」
エー・アイ・キャピタル社長CIO 佐村礼二郎
投資マネーは政策で増えるのか 「政府がVCに出資」の是非

スペシャルリポート
そごう・西武売却で残る入札への疑念と今後の火種
家電量販店が駅前の主役に

スペシャルインタビュー
ピアニスト 反田恭平
「つねに新しいものを生み出し クラシックで食べていく」


ニュース最前線
中日信用金庫で露見した「ゼロゼロ融資」不正の深層
ハウステンボス売却も検討 HISの切迫した懐事情
第一三共を支える乳がん薬 投与対象拡大に高まる期待


連載
|経済を見る眼|「黄金の3年」で岸田政権がやるべきこと|佐藤主光
|ニュースの核心|「拝啓 トヨタ自動車社長・豊田章男様」|山田雄大
|発見! 成長企業|ユーグレナ
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|オリエンタルランド 社長兼COO 吉田謙次
|フォーカス政治|「安倍なきアベノミクス」それぞれ|軽部謙介
|中国動態|中国でハイブリッド車の人気急上昇|田中信彦
|財新 Opinion&News|香港から本土へ「隔離短縮」でも容易でない訳
|グローバル・アイ|英国政治を無責任にしたジョンソン首相の遺産|クリス・パッテン
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|FROM The New York Times|アップルとの契約打ち切ったジョブズの「右腕」デザイナー
|マネー潮流|調整局面入りした商品相場|高井裕之
|少数異見|謝罪会見は企業価値向上の好機にもなる
|知の技法 出世の作法|ウクライナ保安局長官と検事総長の解任が持つ意味|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|ネット社会の「転売問題」 制度設計次第で防止できる|栗野盛光
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