週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年8月13日・8月20日合併号
2022年8月8日 発売
定価 780円(税込)
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【特集】変わる相続


相続では「節税」という言葉が禁句になりつつあります。今年4月に高額のマンション節税が最高裁判決で否定されました。さらに、毎年の「生前贈与」がいつまで続くか不透明な状況です。特集では現実に起きたマンション節税での失敗例や、相続税・贈与税「一本化」のシナリオ、さらに2024年から義務化される相続登記について解説。節税“受難”時代に備えたあらゆる相続対策を盛り込んでいます。

担当記者より

特集「変わる相続」を担当した大野和幸です。相続特集と言えば、今や雑誌の定番。ネット上でも相続の専門サイトがあり、関心は高いようです。とはいえ、相続における日本の課税割合(課税者数/死亡者数)は、年間8%台。10人に1人いません。多くの人は、相続税がかからない範囲の相続であるにもかかわらず、それなのに心配しているというのが実情でしょう。

今号では、その相続で活用されてきた「節税」に黄信号が灯っている、というのが一貫したテーマです。

何と言っても大きいのが、マンション節税への逆風でしょう。今年4月、最高裁判所までいった訴訟で、提訴した相続人(納税者)が国税庁に敗れました。90代で高齢な親が生前、2棟のマンションを多額な借金をしてまで買った後、数年して死亡。それを継いだ相続人である子どもは、親より相続した財産から債務(借金)を差し引いて評価額を激減させ、相続税を「ゼロ」と申告しました。しかし、これを「おかしい」と判断した国税当局が、改めて独自で評価をやり直し、数億円の追徴課税をしたのです。結局、納得いかない相続人が国税庁を訴えたのですが、覆ることはありませんでした。

この敗訴を知って、似たようなマンション節税をしていた、あるいは考えていた人は、背筋が寒くなったことでしょう。多額な借金、高齢な親、そして数年で死亡……ここまで露骨なケースは少ないにせよ、大なり小なり、マンション節税でメリットを享受していた人は少なくないはずです。特に12年からのアベノミクス以降、タワーマンション購入で活用されていた“タワマン節税”は、不動産業界も薦めていた実態があります。

今号では、こうした不動産節税とともに、にわかに浮上した生前贈与への逆風についても、取り上げています。普段は相続など縁起でもない話はできないのが現実。お盆で帰省した際、ぜひ本誌をきっかけに、親子で話しあってみて下さい。

担当記者:大野 和幸(おおの かずゆき)
ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
マンション節税も生前贈与もダメ 変わる相続
[カバーストーリー]衝撃の司法判断で行き詰まる対策 相続で「節税」が禁句になる

第1章 マンション節税にNG!
決め手は“銀行内部文書”だった 実録 不動産節税の「失敗」
[インタビュー]「節税対策では円滑に相続できない」 青山財産ネットワークス 社長 蓮見正純

目的や金額、年齢──これ以上は危ない マンション節税の「線引き」
高級時計こそ贈与に値する資産 ロレックスバブルは終わる
[コラム]株売却益の税率20%を上げるか 金融所得課税に震える市場
[コラム]10億円以上なら提出の義務あり 財産債務調書で捕捉される
早見表① 相続税・贈与税の計算式と税率 最高55%で累進性が高い
早見表② 相続税・贈与税の税額と実質税率 財産と家族構成でわかる

駆け込み贈与で将来の相続税を減らせる!
生前贈与でできる相続税「節税額」シミュレーション

第2章 110万円非課税は廃止?
生前贈与は本当になくなるのか 相続・贈与一本化の筋書き
[インタビュー]「暦年課税は見直し対象 金融所得課税にも着手」自民党税制調査会会長、参議院議員 宮沢洋一
[Q&A]お小遣いも贈与? 知っているようで知らない生前贈与
プロでなくても書ける! 贈与契約書の書き方

教育や結婚資金は縮小・廃止か 一括贈与の非課税生かせ
肉親や税務署と衝突、空き家は不要…… 相続「これでもめました」
 「相続・贈与」3700人アンケートに見る これが“相続する人の実像”だ

第3章 相続と登記をイチから知る
[図解]“その日”は突然、やってくる 押さえるべき相続の基本
1.手続き|期限と必要書類
2.順位|法定相続人と優先順位
3.財産|プラスの財産とマイナスの財産
4.計算方法|5つのステップで相続税を計算

所有者不明土地問題の解消に一歩 相続登記は3年以内が義務
特別受益や寄与分で争いをなくす 遺産分割に10年間の制限
[コラム]インボイス導入を前に身構える 高齢化に直面する税理士
[インタビュー]「精算課税を手直しし、非課税措置は縮減を」日本税理士会連合会 会長 神津信一
[インタビュー]「株は全部売却した 残す物は断捨離する」経済アナリスト、獨協大学経済学部教授 森永卓郎

富裕層を狙い撃ち 初公開!
税務署別 全国相続税 「課税割合」ランキング

第2特集
検証 安倍政治とは何だったのか
[図解]安倍政権の歩みを振り返る

[インタビュー]安倍1強を支えた官邸側近が語る
前国家安全保障局長 北村 滋/元首相補佐官 今井尚哉
 
ライバル・安倍氏について語る
「政治家の歴史的評価は50年かかる」 衆議院議員 石破 茂

[証言]対中「強硬」の深層
アメとムチを駆使した安倍外交

[インタビュー]リフレ派が語る「アベノミクス」評価と今後
「『3本の矢』に大きな共感 金融政策には誤算も散見」 エコノミスト 嶋中雄二

[論考]私たちはアベノミクスで豊かになったのか
超金融緩和を続けることの弊害

ニュース最前線
塩野義コロナ薬の審議継続 緊急承認制度に残る違和感
KDDI、防げた通信障害 業界全体の対策が必須
「漫画村」を出版社が提訴 難航する海賊版の撲滅対策


連載
|経済を見る眼|日本でもやはり値上げは進んでいる|早川英男
|ニュースの核心|東電・株主代表訴訟判決から何を学ぶべきか|岡田広行
|発見! 成長企業|Recovery International
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|エイベックス 社長CEO 黒岩克己
|フォーカス政治|岸田氏が「国葬」を即断した真の狙い|塩田 潮
|中国動態|中国「新型空母」の実力を診断する|小原凡司
|財新 Opinion&News|中国発着の国際貨物列車、ロシア方面が絶好調
|グローバル・アイ|国外逃避ロシア人には「体制転換能力」がある|ケント・ハリントン
|Inside USA|中間選挙にみる2大政党の分断と新・階級闘争|会田弘継
|FROM The New York Times|バイデン大統領がコロナ感染 疑問視されるワクチンの効果
|マネー潮流|中国の住宅ローン返済拒否問題|中空麻奈
|少数異見|政教分離ではなく政教連携を
|知の技法 出世の作法|ウクライナでの戦略目標を 変化させ始めたロシア|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|慎重さや利他性、性格は投資行動にどう影響するか|山根承子
|話題の本|『人は死ねない』著者 奥 真也氏に聞く ほか
|シンクタンク 厳選リポート|
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|編集部から|
|次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2022年8月13日・8月20日合併号」(8月8日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
62ページ ■Q6「家族なら当事者同士が黙っていれば税務署に贈与が漏れませんか。」の答え

【誤】税務署から届く、「相続についてのお尋ね」
 ↓
【正】税務署から届く、「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」