年末年始3号連続企画の第2弾にあたる「2026大予測 株・マネー編」を担当した二階堂です。
校了期間中にふと手に取った書籍『かぶと町回顧五十年』(小社刊、1982年)では、戦時中における株式市場の様子が克明に描かれていて、思わず引き込まれました。敗戦ムードが漂い、株式の取引量は減少の一途をたどる中、最大の転機となったのが45年3月10日の東京大空襲。ここから軍需株が売られ、紡績・人絹株などが顕著に値上がりするという異変が起きていたそうです。
「敗戦近しなどと言ったら、すぐ憲兵に引っ張られてひどい目に遭う世の中だというのに、株価だけは大胆に『敗戦近し』と唱えだしたのである。まことに株価は正直だ」と、著者で弊社OBの壁井与三郎氏は述懐しています。同氏は『会社四季報』の発案者である小倉政太郎氏の部下でもありました。
ひるがえって今の日本の株式市場は、防衛費の増額を受けて、日本の防衛関連銘柄の株価がとみに好調です。2026年度の防衛費は過去最大の9兆円超となる見込みで、関連の装備取得費などを含めた支出は、名目GDP比で2%に達するとみられています。
名目GDP比3%への引き上げも噂されており、重工メーカーやゼネコンのみならず、業務を実行支援する新興コンサルティング企業までが防衛銘柄の仲間入りをしています。民間向けの事業開発などを主とするコンサル会社の社長は、新たな鉱脈をみつけたといわんばかりに、防衛関連の受注実績を誇っていました。
アメリカが孤立主義に突き進む中、防衛費の増額が「危険」と安易なことを言うつもりはありません。官民連携でスタートアップの技術革新が進むという期待できる側面もあります。ただし防衛特需がいつまで続くのか、株価は日本の針路を支持し続けるのか――。炭鉱のカナリアが発する鳴き声に耳を澄ませることが必要かもしれない、という気持ちも沸いています。
担当記者:二階堂 遼馬(にかいどう りょうま)
2008年東洋経済新報社入社。産業担当や週刊東洋経済編集部の大型特集を歴任。2020~21年に会社を休職して、米国に留学(フルブライト奨学生)。帰国後は再び週刊東洋経済編集部に所属の後、解説部で米国の政治経済やテック情勢を担当。2024年7月から3度目の週刊東洋経済編集部所属。直近では「上場企業クライシス」「半導体異変」「進撃のアクセンチュア」などを取りまとめた。