特集「造船復興 国策大転換の行方」を担当した森創一郎です。
1970年代のオイルショック以降、日本の造船業界は海運市況に翻弄され、重工各社は祖業の造船業を縮小し続けてきました。
代わって船造りを支えてきたのは、戦国時代の海賊・村上水軍にルーツを持つ、瀬戸内海沿岸を中心とする造船専業会社でした。これらの会社は非上場のファミリー企業が多く、時にはライバルとして争い、時には協業仲間として支え合ってきました。こうした独特の企業風土があったからこそ、ごり押しのようなスピード経営が可能となり、荒波とも言える市況の中で日本の造船業が生き残ってきたのです。
この造船業界が、国策の追い風を受け、経済安全保障の文脈でにわかに脚光を浴びることになりました。世界の造船市場は日本、中国、韓国の3国が寡占していますが、中でも中国は世界シェアの5割を握っています。地政学リスクの高まりの中で、日本の貿易の99%超を担う海上輸送を中国製の船に依存することに、日本政府が危機意識を持ち始めたのです。
しかし、これまで衰退産業の象徴だった造船業界には困惑も広がっています。見たこともない予算がついた国土交通省海事局は大いに発奮していますが、肝心の造船所はいまだ職人気質の世界で、デジタル化も遅れ、リストラに次ぐリストラで人手不足も深刻、教育機会も減るばかりです。数少ない上場造船会社は突然の株価上昇にかえって危機感を強め、関連企業も慣れない取材対応に四苦八苦するケースが少なくありません。
国は2035年までに日本の造船建造量を年1800万総トンへと倍増させる計画を打ち立てていますが、前途は多難。「建造量倍増など絵空事」と語る業界関係者もいます。
造船復興は、長い目でじっくりと見守っていく必要がありそうです。
担当記者:森 創一郎(もり そういちろう)
1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリーライター、放送記者を経て2020年から東洋経済記者。東洋経済編集部副編集長。

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