大学生たちは、本当にお金がない。
キャンパスは貧困の巣窟である。
そして、必要な金額を稼ぐために働く時間もない。
大学生たちの貧しさ、貧困は、親の世帯収入が下落して、受益者負担として学費が高騰を続けていることが背景にある。
さらに現在の大学にかつての出欠が自由だった姿はなく、授業は忙しい。
働こうと意気込んでも、アルバイト情報サイトに掲載されている求人は最低賃金に張りついたものばかりだ。
学生生活に必要な金額を稼ぐことはできないのだ。
すでに日本学生支援機構の奨学金受給者は、全学生の過半数を超えている。
大学生たちの過半数は、自己破産相当の負債を背負って社会に羽ばたくことになる。
現在の大学生たちは、キャンパスが楽しく華やかだった30年前とはまったく違う世界を生きているのだ。
貧しいことで、いいことはなにもない。
大学生たちが、未来が閉ざされる選択となる中退となったり、犯罪である食い逃げみたいなことをするわけにはいかない。生きるため、学生生活の維持のために、時間単価が高く、稼げる仕事や手段に流れていくのは必然といえる。
私は「現役女子大生たちが続々とパパ活に流れている」という話を聞き、パパ活の舞台になっている、ある掲示板にアクセスしてみた。
パパ活とは女性たちが夢や願望、自己実現、生活のため就活や婚活をするように、パパなるパトロンを見つける行動だ。
昭和の時代から配偶者以外の特定の異性と肉体関係を結び報酬を得る「愛人」「援助交際」はあるが、「愛人」や肉体関係を前提とした「援助交際」と現代の「パパ」は似て非なる。現代のパパ活は、本当に驚くほど普通の大学生や専門学生、正規非正規で働く普通の女性たちが手を出している。さらに2018年になってからは若い男性がパトロンになってくれる年上女性を探すママ活も活発になっている。
その背景には男女間の収入格差、世代間の収入格差、若い世代の低賃金労働がある。非正規雇用が40%を超え、自立する多くの未婚女性たちの生活は基本的に苦しい。結婚や出産など長期的な展望が見えなくなった女性たちが、年上男性と経済的な援助を前提に交際や恋愛をする。普通に恋愛する人もいれば、売買春に近いような関係もある。ちなみに売春に近い関係となっても、パパ活は自由恋愛なので違法ではない。
〝現役女子大生〟を売りにしているメッセージは、すぐにいくつも見つかった。
21歳の国立大学生です。
授業が忙しくて多く働けず、
親からの支援もないので、
支えてくれる方を探しています。
昔からわりとモテるほうなので、
容姿も性格もそんなに悪くないと思います。
条件書いてメールください。
そのひとつに連絡してみた。
彼女は偽名を使ったり、噓の学歴を伝えたり、警戒心が強かった。メールを何度もやり取りした。女子高生のようだ、と思った。警戒心が過剰に強いのは大人とのやり取りに慣れていないからであり、精神年齢が幼い証しである。
結局、数日後、この女性、広田優花さん(仮名、21歳)に会うことになった。指定されたのは、新宿アルタ前だった。
現れたのは
国立大学医学部の現役女子大生
あのう、19時に待ち合わせしている広田です。
女性編集者としばらく待っていると、申し訳なさそうな小さな声で声をかけられた。信じられないほどの美少女で絶句した。芸能人にたとえれば、有村架純に似ている。女性編集者も「えっ」と声を失い、私に目線を送る。一緒に歩いていると、すれ違う通行人に振り返る人もいるほどで、本当に圧倒的な美少女だった。
人が少ないだろうシティホテルのカフェラウンジに入った。
猜疑心と人見知りからか、広田さんは黙ってうつむいていた。おそらく、なんとなく取材を受けてしまったが、よくよく考えるとリスクがあるのではないか、という心境だろうか。なんとか緊張を解き、話を聞く。
掲示板に書いてあったとおり、本当に国立大学の現役学生で、しかも医学部だった。入試偏差値は70を超える最難関大学である。本人の顔写真入りの学生証も確認した。外見スペックが極めて高いだけでなく、加えて最高偏差値に近い大学の学生だった。そんな女子大生が貧困取材という場に現れたことに驚いた。