男たちの履歴書

昭和の企業家の熱気とロマン

加藤 廣著
2017年5月26日 発売
定価 1,100円(税込)

ベストセラー『信長の棺』などで知られる歴史作家の加藤廣氏だが、元々は中小企業金融公庫・調査部長などを歴任した「企業分析のプロ」である。50歳で同公庫を退職した後は、経営コンサルタントとしても活躍し、75歳で作家デビューする前に著したビジネス書も数多い。そのなかから1981年(昭和56年)に刊行した『男たちの履歴書』を電子書籍として復刻出版したのが本書である。
本書には、「昭和」の熱気を体現するような30人以上の企業家たちの姿がいきいきと描かれている。稲盛和夫氏、永守重信氏、堀場雅夫氏など、その後、日本を代表する経営者となった方たちも多数登場し興味深い。36年前の本ながら、人事問題、新製品開発、市場開拓、合弁、事業承継など普遍的な経営課題が、有名無名の経営者の生き様とともに描かれ今日性がある。後に歴史小説家として大成した著者の筆致は軽妙で、単なる企業家列伝にとどまらないエッセイとしての魅力にあふれる。
復刻に寄せた著者の言葉――「昨今、企業物語というと、なにかと、ささくれた、しらけた話が多いようだが、本復刻判が、昭和を偲(しの)び、現代を考え直す、縁(よすが)ともなるなら、これも望外の喜びである」という思いが伝わってくる1冊である。

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概要

中小企業金融に携わって30年。幾多の企業・経営者の浮沈=現代社会の男の生きざまを眺めてきた著者が、知られざる“一隅”を照らす無名の人々のロマンと感動を冴えた筆致で描く。

目次

復刊に寄せて
まえがき
第1章 不思議な出会いが生んだ「日本一のじゅうたん」
第2章 第2章 調理パン日本一メーカーが〝おにぎり〟直販を展開
第3章 息子のために計画・実現した〝優雅な廃業〟
第4章 仏門出身〝ベンチャーの雄〟の重い決断
第5章 「一事専念」で切り拓いた直販ルート
第6章 理想主義が生んだ「稟議なき経営」
第7章 「マネシタ」を徹底的に嫌い独自性で勝負する
第8章 〝納入業者いじめ〟がもたらした思わぬ巨大資産
第9章 日本でダメでもアメリカで成功してUターン
第10章 ズブの素人だからこそ再建できた実家の旅館
第11章 社内の猛反対を押し切った家庭用塗料への転換
第12章 食の工業化に抗し「手作りの本物の味」を追求
第13章 〝道楽者〟がつくりあげた異色の急成長企業
第14章 「なにくそオヤジ」の〝常識破り〟への挑戦
第15章 下請けから変身し高シェアニッチメーカーへ
第16章 大資産家が見つけた充足感あるお金の使い方
第17章 創業者はなぜ五三歳で社長の座を譲ったのか
第18章 病気まみれの社長が築き上げた労働参加経営
第19章 便所の落書き帳から知る社員の本音
第20章 伝説的な開拓者への傾倒が生んだ銘菓
第21章 長男と「父子契約」を結ぶ酪農経営者
第22章 家庭用モチつき機を生んだ社長の深慮遠謀
第23章 人夫から身を起こし県有数の企業を育成
第24章 「手形ゼロ」の断行で生まれた経営の余裕
第25章 〝夢の啓示〟で改姓し運を切り拓く
第26章 奇跡的な運に恵まれた二人の経営者
第27章 かけ声倒れでない真の「全員経営」を実現
第28章 偶然の出会いが生んだ名酒「大吟醸・八海山」
第29章 バカでも優秀すぎても上手くいかない後継問題
第30章 後継者は頭の良さよりも人間性の良さで決める
第31章 十年前の債務を完済した「節約と愛」
第32章 私の代わりに誰か社長になりませんか?

著者プロフィール

加藤 廣  【著】
かとう ひろし

昭和5年(1930年)東京生まれ。東京都立新宿高等学校、東京大学法学部卒業。中小企業金融公庫に入庫し、貸付・審査関係を経て山形支店長、京都支店長、調査部長などを歴任。51歳で退職後、山一證券経済研究所顧問、埼玉大学経済学部講師などを務める。経営コンサルタントとして中小企業の育成にも奔走。平成17(2005)年に作家としてデビュー。作家デビュー以前からビジネス書を著していたが、75歳での高齢デビューが話題となった。
作家としてのデビュー作となる小説『信長の棺』は、日本経済新聞・出版部門上層部が「こんな小説は1冊も売れないだろう」と反対する中で、2人の中・若年社員が敢然として押し切り、初版4000部でスタートした。折しも当時の小泉純一郎総理が愛読書として挙げたこともあり一躍30万部を超す大ベストセラーとなった。『秀吉の枷』『明智左馬助の恋』と合わせ本能寺三部作となり、文藝春秋で後に文庫化されて、現在も合計200万部を超す名作として多くの読者の支持を受けている。