「データセンター急拡大」を担当した印南志帆です。ここ数週間、グローバルで生成AI(人工知能)に関するビッグニュースが続々とでてきています。直近では、2月3日にソフトバンクグループと米オープンAIが合弁会社を設立すると発表しました。
新会社では日本企業の独自データを活用し、カスタマイズされた最先端の生成AIを開発していくプロジェクトを始めるそう。1月下旬にホワイトハウスで発表された77兆円を投じる壮大なAI構想「スターゲート」の日本版といえます。発表会の会場でオープンAIのサム・アルトマンCEOと対談をする孫正義会長は終始上機嫌で、まさしく「会心の笑み」を浮かべていたのが印象的でした。
AIの開発を開発するうえで、その「工場」となるのがデータセンターです。しかも、ただ単にサーバーを置いておけばいいのとはわけが違います。膨大な量のデータを学習させる必要のある生成AIの開発には、米エヌビディアなどが開発するAI半導体を搭載したサーバーが必要ですが、高性能なAIサーバーは、莫大な電力を食います。そして、それに伴い発熱するのです。安定して稼働できるように、安定的に大量の電力を供給し、サーバーを冷やし続けるための、特殊な設備が必要となります。
今回、キヤノンITソリューションズにAIサーバーなどにも対応したサーバールームを見せてもらいました。従来のデータセンターは巨大なエアコンのような設備でサーバーを冷やしていますが、高発熱のAIサーバーを冷やすには効率が悪く、12月から液体で冷やす設備を導入しました。空調で冷やしたサーバーの前に立つとオーブントースターに顔を近づけたような熱気を感じたのに対し、液冷のサーバーの前に立つと熱さをまったく感じなかったのが驚きでした。
中国も爆速でデータセンターを全土に整備し、有力な生成AIが開発されてきています。企業間同士の競争を超え、もはや国家の覇権がかかった形となりつつある「AI開発戦争」。そのインフラとして急拡大する「データセンター経済圏」の現在地を、テクノロジーに詳しくない人でもイチからわかるように構成しました。是非、お読みください。
担当記者:印南 志帆(いんなみ しほ)
早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。