週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌。

担当記者より
2020年7月18日号
2020年7月13日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】コロナ 徹底検証

日本での新型コロナウイルス感染者数や死者数が少ないことについて、「日本人のまじめさや清潔好きのおかげ」といった論調もあります。しかし、子細に振り返ると、とても褒められたものではありません。PCR検査、医療体制、ワクチンや治療薬の開発、経済対策……。その場しのぎで何とか対処したというケースが散見されます。
 
次の感染拡大に向けて何をすべきなのか? 第1波における日本勝利のミステリーについて徹底検証し、第2波への適切な備えについて考えていきます。

 

【スペシャルリポート】香港問題めぐり米中激突 加速するデカップリング


6月30日、「香港国家安全法」が施行されました。「一国二制度」の下での高度な自治が失われたとして、西側世界と中国の対立は一気に深まっています。米中経済の分離は、サプライチェーンの見直しなど、グローバル企業にも大きな変化を迫りそうです。

担当記者より

「はたして自分がワクチンを接種できる日は来るのだろうか」──。今回の特集で原稿を進めながら、私は絶望的な気分になりました。

新型コロナの感染拡大が続く中、世界中が待ち望むワクチン。欧米や中国で進む開発レースには、もちろん日本の開発プロジェクトも複数食い込んでいます。ところが、取材を進めるにつれ、その状況でも実は決して楽観できるものではないということがわかりました。

米国は、複数のプロジェクトがワクチン開発にしのぎを削る一方で、同時に量産体制の構築も進めています。政府が音頭を取って来年1月までに3億人分のワクチンを確保することを掲げているのです。米国ばかりではありません。欧州や中国でも国を挙げて、供給体制の確保に余念がありません。

片や日本では、開発を進める企業が公表している「2020年内に20万人分」という目標があるのみで、政府は数値目標すら示せていません。第2次補正予算ではワクチン製造体制支援に1377億円を計上してはいるものの、欧米各国に比べると規模があまりにも違いすぎます。今回取材したある専門家によれば、今の日本の状況を「毎週、毎週、遅れを取っている」とのこと。そのくらい各国は急ピッチで製造能力の増強を進めているというのです。

日本は2009年に新型インフルエンザが流行した際にも、ワクチン供給が間に合わなかった過去があります。当時も量産化技術での遅れが響きました。国内供給ができなかった日本は、数千万人分を高価格で輸入しましたが、確保できたタイミングではすでに流行が終息しており、購入したワクチンの99%を廃棄したのです。

「新型ウイルスの流行は遅かれ早かれ必ずやって来ると専門家は誰しも予想していたのに、ワクチンの供給体制には手をつけられていなかった」とある専門家は言います。

これまで「開発」ばかりがクローズアップされてきたワクチンですが、「作る」面でこれから日本はどうなるのでしょう。不安ばかりが募ります。

担当記者:石阪 友貴(いしざか ともき)
東洋経済記者。医薬品業界を担当。早稲田大学政治経済学部卒。2017年、東洋経済新報社に入社してから食品・飲料業界を担当。ラグビーと格闘技、ツーリング、ビールが好き。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
コロナ徹底検証

Part1  [ 政策 ]の功罪
8割削減にバッシングの嵐 「自粛過剰」批判は妥当か
コロナ禍を克服できるか 石油ショックからの教訓
リスクに見合った賢い対策を 経済や学業の犠牲は限界
重要情報がわからず検証不可能 疑惑深まる持続化給付金
悪影響は卒業後も続く 全国一斉休校の深い爪痕

Part2 [ 第1波 ]を検証
なぜ死者数が少なかったのか “日本勝利”のミステリー
「感染を抑え込めたのは ただ運がよかっただけ」●神戸大学大学院 教授 岩田健太郎
「教訓」生きず、PCR目詰まり 気づけば感染対策の後進国
“命の砦”で何が起きていたのか そのときICUは地獄だった
「もう次の波は来ている 短期間で体制構築を」●国立国際医療研究センター 大曲貴夫

Part3 [ 第2波 ]に備える
往来再開が「第2波」の引き金に? 水際対策の難しい舵取り
「五輪選手の感染対策 実務はかなり難しい」● 国際医療福祉大学医学部教授 和田耕治 
「接触確認」の可能性と限界 ITで感染を予防できるか
「行政とIT企業が連携し ビッグデータを活用せよ」 ●慶応大学医学部教授 宮田裕章
感染爆発の米国、ブラジル 経済活動再開の視界不良
 「コロナは貧困国を直撃 制圧には時間がかかる」 ●世界エイズ・結核・マラリア対策基金 局長 國井 修
PCR検査の拡充と新手法の開発 検査難民は解消されたのか
国益を懸けた開発競争 ワクチン開発 各国が火花
「感染症に強い街づくりへ 人の移動の見直しも重要」 ●北海道大学大学院教授 西浦 博

スペシャルリポート
香港問題めぐり米中激突 加速するデカップリング
国家安全法で香港を取り仕切る男の“度量”

ニュース最前線
東芝vs.モノ言う株主 取締役選任案めぐる攻防戦
不振の国内販売をテコ入れ 日産、新型SUVの重責
電力営業で相次ぐトラブル 事業者の狙いは「検針票」


連載
|経済を見る眼|コロナ禍で見えた新しい暮らし方|柳川範之
|ニュースの核心|ベーシックインカム待望論の危うさ|大崎明子
|フォーカス政治|近づく「コロナ総選挙」は 歴史的な転換点となるか|塩田 潮
|グローバルアイ|独裁者と手を結ぶ破廉恥な国際金融|ダロン・アセモグル
|INSIDE USA|急変する米世論の人種観 黒人男性の死が問うたもの|肥田美佐子
|中国動態|超高速化する中国のリニア 営業運転の展望は開けず|田中信彦
|財新|深圳市EV向け独自補助金のからくり中国の自動車業界にデフォルトの連鎖
|マネー潮流|リスクオンでも1ドル=90円目指す|佐々木 融
|少数異見|日本の高齢者が施設で丁寧に守られる理由
|トップに直撃|デジタルハリウッド大学 学長 杉山知之
|人が集まる街 逃げる街|栃木県 日光市|牧野知弘
|知の技法 出世の作法|米国が抱える病理を指摘 北朝鮮の意図は何なのか|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|選挙の直前に増える? 政治家の「実行なき発言」|後藤 潤
|話題の本|『ADHDの正体』の著者 岡田尊司に聞く ほか
|クラシック音楽最新事情|コンサート宣伝の未来 「紙の束」は消えるか?|田中 泰
|「英語雑談力」入門|window of opportunity|柴田真一
|経済クロスワード|コロナ危機と医療
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