図説 日本の財政(平成23年度版)

西田 安範編著
2011年9月16日 発売
定価 2,530円(税込)
ISBN:9784492031896 / サイズ:サイズ:A5判/ページ数:472

平成23年度予算を図解!




平成23年度予算について、東日本大震災対応の第1次補正予算、第2次補正予算を含めて図解しています。財政の仕組み、財政の理論などの予算と税制の全体像に加えて、社会保障・税一体改革、国債格付けなどの最新の話題もカバー。主要諸国の財政の現状、日本財政の歴史などを、わかりやすくコンパクトに解説しています。




はしがき




 本書は、財政の仕組みや現状について、図表を用いながら、できるだけ具体的に分かりやすく、また幅広く解説した本として、昭和30(1955)年にはじめて刊行されて以来、多くの社会人や学生の方々に読み継がれてきました。ここに、その平成23(2011)年度版をお届けします。


 このところの我が国の経済・財政を顧みると、かつてない大きな変動が次々と生じてきました。



 2008 年秋のリーマンショック後の急激な経済情勢の悪化の後、我が国経済は緩やかに持ち直してきましたが、そうしたなかで、本年3月に東日本大震災が発生しました。震災は、被災地に甚大な被害をもたらすとともに、サプライチェーンや電力供給などの問題を通じ、我が国経済全体にも大きな影響を及ぼしました。政府は、震災からの復旧復興に、補正予算等を通じ取り組んでいくこととしています。海外に目を向けると、ヨーロッパでは、ギリシャなどのいわゆる周縁国の財政問題が深刻化し、それを契機とした金融市場の不安定化が世界経済のリスク要因とされています。また、米国でも、債務上限問題が大きな政治的論点となりました。このように、海外でも財政を巡る状況が大きな話題となり、これらのことを通じて、改めて日本の財政問題が注目され始めています。
 こうした状況を踏まえつつ、平成23(2011)年度版の編集にあたっては、これまで同様豊富な図表によるわかりやすい説明を心がけました。また、「コラム」を活用して、国内外を通じた最近の話題を含めて財政に関する事項やさまざまな経済政策について、編著者なりの視点からの解説を試みています。



 本書を読むにあたって、まず財政の仕組み、現状、制度に関する基礎知識を身につけたいという方は、第1)部第1章、第3章、第2)部第1章、第2章、そして第3章以降の「基礎知識」のところを読まれるとよいでしょう。また、平成23年度予算の概要を知りたい方は、第2)部第2章の第2節及び第3節や第3章から第12章の各第3節などを読まれるとよいでしょう。加えて、東日本大震災への対応について知りたい方は、第2)部第18章などを読まれるとよいでしょう。その他にも、本書では、財政の理論や歴史、海外事例のほか、財政投融資、国庫金制度、税制改正、金融政策などについても解説しています。読者のみなさまの必要と時間にあわせた読み方をしていただければ幸いです。



 本書を手にとられた多くの方は、おそらく「日本の財政状況は極めて厳しい」といったことは耳にされたことがあるでしょう。一方で、国の予算や財政問題というと、何か難しいもの、自分の生活と縁遠いものと感じているかもしれませんが、決してそんなことはありません。
 財政とは、国民が税金という形で負担したお金を原資に、国が国民に対して種々のサービスを提供していく活動のことです。「打ち出の小槌」のようなものはありません。原資がふんだんにあれば提供できるサービスも充実しますが、原資が乏しければ提供できるサービスは限られます。苦しいからといって、安易に借金をして、それがどんどん膨らんでいってしまえば、将来にわたって借金の返済に追われることになります。自分が受けたサービスのための借金を自分の子や孫の世代に負わせることにもなりかねません。国の財政を巡る議論の本質は、意外にシンプルなものです。



 財政は縁遠いものではなく、それによる受益も、それを支える負担も、国民全員に関係するものです。また、財政が悪化することによる影響も全て国民に及んでいくものです。どの程度の原資でどのようなサービスを享受するのか、また、その原資を国民全体としてどのように担っていくのか、と考えることは、まさに国民一人一人の今と将来の生活に直結するものであり、国民一人一人が真剣に向き合うべき切実な課題と言えるでしょう。



 本書が、この切実な課題に向き合うための一助となることを、筆者一同心から願っております。




平成23年8月                                       編著者

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概要

日本の復興に向けての予算と税制の全体像、財政の仕組み、財政の理論、主要諸国の財政のあらまし、日本財政の歴史などを、わかりやすくコンパクトに解説した日本財政読本。

目次


第I部 財政についての基本問題
第1章 財政の役割と機能
第2章 財政をめぐる理論
第3章 財政の現状
第II部 財政の仕組みと関連する事項
第1章 予算制度
第2章 総説
第3章 社会保障
第4章 文教及び科学技術の振興
第5章 社会資本の整備
第6章 経済協力
第7章 防衛力の整備
第8章 中小企業施策の推進
第9章 農林水産業の振興
第10章 エネルギー・地球温暖化対策の推進
第11章 国債費
第12章 地方財政
第13章 予算制度改革
第14章 財政投融資
第15章 国庫金制度
第16章 税制改正
第17章 金融政策
第18章 東日本大震災への対応
第III部 我が国財政のあゆみ
第IV部 諸外国の財政
第1章 主要国の予算制度の国際比較
第2章 アメリカ
第3章 イギリス
第4章 ドイツ
第5章 フランス
第6章 中国

 

著者プロフィール

西田安範
にしだ・やすのり

昭和59年大蔵省(現・財務省)入省
現在、財務省大臣官房総合政策課長