中国東北部の「昭和」を歩く

鄭 銀淑著
2011年7月15日 発売
定価 2,090円(税込)
ISBN:9784492044292 / サイズ:サイズ:四六判/ページ数:336


戦争を知らない世代が見た旧満州の残像




私は歴史学者でも、研究者でもありません。

ただ、日本の植民地時代に思いを馳せるのが好きな旅人に過ぎません。



幸いにもさまざまな縁があり、

かつての満州国で暮らした方たちと出会って、

いろいろな話を聞くことができ、

このような本を書く機会に恵まれました。



私が住む朝鮮半島や、中国東北部、台湾の日本植民地時代については、

個人によって評価が異なるので、

その是非をどうこう言うつもりはありません。




私は、かつての満州の地を歩き、

満州時代の日本人や中国人、朝鮮人がどのように暮らし、

どんなときに笑い、どんなときに泣いたのかを想像してみたかったのです。



私の旧満州への旅は、

延辺朝鮮族自治州に属している延吉、龍井、図們などの小都市から始まりました。

抗日運動の舞台であり、開拓の地であり、今も朝鮮族の多い所です。

彼らの生活には今の韓国では見られない朝鮮の伝統や風習、言葉が残っています。

それがとても不思議であり、うれしいことでした。



次に訪れたのは、満州国の首都で、当時「新京」と呼ばれた長春。

当時の近代建築物である官公庁の建物の多くがそのまま残り、

現在は中国政府の建物として使われています。

当時の建物をそのまま利用する、中国人の現実的な一面と、

国辱的な歴史を二度と繰り返すまいと願う歴史観が感じられます。



さらに、旧満州最大の都市で奉天と呼ばれた「瀋陽」、

満州の関門だった大連、日露戦争の激戦地だった旅順を旅しました。



個人的に、いちばんおすすめなのは龍井です。

長春、瀋陽、大連のような大規模な近代建築物はありませんが、

映画館や銀行など小中規模の建物が並んでいます。

昔の東京や京城もこんな雰囲気だったのかもしれません。



郊外には朝鮮式の草ぶき家屋が残っています。

人力車や馬車も当たり前のように往来しています。

もちろん、飲食の楽しみも多いです。

伝統的な朝鮮料理から独自の発達を遂げた延辺料理や、

手が届きそうなほど近くにある北朝鮮の影響が濃い料理が楽しめます。



歴史の難しい話は抜きにして、海洋
まずは中国東北部に出かけてみませんか。



──著者・鄭銀淑

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概要

延辺、長春、瀋陽、大連、かつて満州国と呼ばれた地に開拓民として日本や朝鮮から移住した人々の昔話を聞きながら、日本建築などが今も残る中国東北部を当時の姿に思いをはせながら歩く。

目次


第1章 中国東北部に息づく二つの朝鮮
    延吉・龍井
第2章 中・朝・露の文化が混在する街
    開山屯・図們・琿春・和龍
第3章 近代建築が残る旧満州の首都
    長春(新京)
第4章 誰もが憧れた旧満州の大都会
    瀋陽(奉天)
第5章 ”昭和”が香る霧とアカシアの都
    大連・旅順

 

著者プロフィール

鄭 銀淑
チョン・ウンスク

紀行作家。
韓国や中国で日本植民地時代の面影が残る街をフィールドワークし続けている。1967年,韓国北部の江原道生まれ、ソウル育ち。ソウルの世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本留学。現在はソウルで執筆・翻訳・取材コーディネートを行う。

著書に『韓国の「昭和」を歩く』(祥伝社)、『マッコルリの旅』『韓国「県民性」の旅』(ともに東洋経済新報社)、『韓国の人情食堂』(双葉社)、『韓国・下町人情紀行』(朝日新聞出版)、『韓国の美味しい町』(光文社)など。asahi.com 国際面でコラム連載中。