遺伝子のスイッチ

何気ないその行動があなたの遺伝子の働きを変える

生田 哲著
2021年3月19日 発売
定価 1,980円(税込)
ISBN:9784492046876 / サイズ:四六/並/218

人生、能力、生き方、考え方は遺伝子で決まらない!
遺伝子を「オン/オフ」にするスイッチ
「エピジェネティクス」を解説

人生、能力、生き方、考え方といったものが遺伝子によって決まっている、あるいは遺伝子検査を受ければこれらがわかるなどと思われている。テレビ、新聞、雑誌、そしてステマの無法地帯となっているインターネットなどを通してそう宣伝されるからであるが、これは誤りである。遺伝子は環境とかかわることではじめて働くからである。遺伝子の役割は過大評価されている。
遺伝子の働きは、食事や運動などの生活習慣やどんな書物を読むか、どんな人とつき合うかなどによって劇的に変わるからである。
一卵性双生児を例に説明しよう。一卵性双生児は、英語で「まったく同じ双子」(identical twin)と表現されてきたものの、正確には「まったく同じ」ではない。「一卵性双生児」は、まったく同じ卵子から生まれ、同じ女性の子宮の中で同じ時期に育った双子である。ふたりは先天的な環境は同じであるが、後天的な環境は同じではない。だから、一卵性双生児で生まれたひとりは学校の教師をし、充実した日々を送るが、もうひとりは薬物依存に苦しむことだってありうる。
たとえ同じ遺伝子をもっていても、同じ結果になるとは限らない。それどころか、同じ結果にはならないことが多い。そして、最近の研究によって遺伝子の働きを変えるしくみ、すなわち、遺伝子を使う(オン)にしたり、遺伝子を使わない(オフ)にするスイッチが存在することが明らかになった。このスイッチを研究するのが「エピジェネティクス」という、今、爆発的に発展している学問分野であり、本書のテーマである。

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概要

遺伝子には個人差はほとんどない。遺伝子のスイッチがオン/オフで、健康、考え方、行動、ひいては人生が大きく変わる。

目次

第1章 人生はDNAの配列だけでは説明できない
一卵性双生児も異なる人生を歩む
エピジェネティクスとは?
肥満は母のお腹の中で決まる
低栄養で生まれると生活習慣病になりやすい
無意識のうちに買ってしまう
やめたくても、やめられない薬物
遺伝子のスイッチとなるタグの存在
DNAはハードウエア、エピゲノムはソフトウエア


第2章 ゲノム研究からわかったこと
遺伝子はDNAのごく一部分
遺伝子はタンパク質のつくり方を示す「レシピー」
わずか4文字で20種類のアミノ酸を指令する
すべての生物に共通する遺伝暗号


第3章 エピジェネティクスとは何か?
なぜ、長いDNAが小さな核内に収まるのか
遺伝子はオフになることも大切
遺伝子発現のメインスイッチ「ヒストン修飾」
ヒストン修飾におけるメチル化は複雑
もうひとつのメインスイッチ、DNAメチル化

第4章 薬物依存と食べ物依存から考えるエピジェネティクス
日本に蔓延する薬物
覚醒剤のメリット
依存と離脱症状は必ずやってくる
報酬系をかけめぐる快感物質ドーパミン
油断ならない、「合法薬物」アルコール
依存症にかかわるエピジェネティクス
覚醒剤 VS コカイン
薬物犯罪を再発させるエピジェネティクス
古典的な実験「パブロフの犬」─キューと報酬をつなぐ連合学習


第5章 エピジェネティクスとうつ
国民病となったうつ
うつの原因となる単一の遺伝子は見つかっていない
うつを引き起こすストレス
抗うつ薬の謎
うつマウスの作製
うつの脳では報酬系の遺伝子がオフ
ドーパミン遺伝子オンでうつが改善
母が子をもっと可愛がるとボーナス効果あり

第6章 母の子育てが子どもの脳に影響する
子どものころの逆境と慢性病
子どもの脳を傷つけるマルトリートメント
子どもを可愛がりましょう
高LGラット VS 低LGラット
高LGラットの子は不安が少なく、自制が効く
遺伝より育て親の習慣
エピジェネティクスは元に戻すことができる
人間の母親による子のケアが大切
養育がエピジェネティクスを適切にする
スキンシップの効果

著者プロフィール

生田 哲  【著】
いくた さとし

薬学博士。1955年、北海道に生まれる。がん、糖尿病、遺伝子研究で有名なシティ・オブ・ホープ研究所、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などの博士研究員を経て、イリノイ工科大学助教授(化学科)。
遺伝子の構造やドラッグデザインをテーマに研究生活を送る。現在は日本で、生化学、医学、薬学、教育を中心とする執筆活動と講演活動、脳と栄養に関する研究とコンサルティング活動を行う。著書に、『ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く 』 (講談社+α新書)、『よみがえる脳』『脳にいいこと、悪いこと』 (以上、サイエンス・アイ新書)。『よくわかる! 脳にいい食、悪い食』『子どもの脳は食べ物で変わる』(以上、PHP研究所)など多数。