天才ピアニストの沈黙と再生
◎1985年、19歳の時にショパン国際ピアノコンクールで優勝した天才ピアニスト、スタニスラフ・ブーニン。ダイナミックで華麗な演奏は世界中を魅了し、日本では「ブーニン・シンドローム」とさえ呼ばれる熱狂を巻き起こした。その後、音楽活動の自由を求めてソ連から西ドイツに亡命。ドイツと日本の二拠点で生活しながら充実した日々を送っていた。しかし、2013年夏。予定されていた公演を突然キャンセル。舞台から姿を消した。
◎左肩の「石灰沈着性腱板炎」で左手がマヒ。さらに復帰を目指し始めた矢先、今度は自宅で転倒し、左足を骨折した。持病の糖尿病の影響で患部が壊死し始めため、その部分を切除する大手術を行う。
◎「それでもピアノを弾きたい」――。妻・榮子さんの後押しもあり、ブーニンは舞台復帰を目指す。2022年6月にはミニリサイタルを開催。さらに翌年は、代名詞のショパンを演目に据えたツアーを開催。復帰を目指す姿に密着したNHKのドキュメンタリーは大きな話題を呼んだ。
本書は過去のドキュメンタリーに2025年シーズンの公演の模様などを大幅に加筆し、ブーニンの人と音楽の魅力をあますことなく伝える。