ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

西田 亮介著
2013年5月31日 発売 在庫なし
定価 1,650円(税込)
ISBN:9784492212097 / サイズ:四六/並/240

2013年参院選から解禁されることとなった「ネット選挙」。
しかし、そもそもネット選挙とは何なのか? その解禁によって、巷間言われるように「お金がなくても政治家になれる」、「ネットで見た候補者の発信に触発されて、若者が選挙に行くようになる」というのは本当か? 「この情報化社会にインターネットの使用を禁止するなんて、時代遅れもいいところだ!」という主張は正しいのか? テクニカルな側面だけを見ていても、本質には辿り着けない。ネット選挙を丁寧に一歩踏み込んで考察すれば、これらの主張が幻想に過ぎないことは明らかだ。

しかしそれなら、ツイッター議員はなぜツイッター議員であろうとするのか? なぜ全国紙がソーシャルメディア分析に取り組むのか? 解禁による静かな変化が、候補者・有権者・マスメディア・ネットメディアに及ぼす影響はどのようなもので、そこから日本はどう変わっていくのだろうか? インターネットの設計思想を政治に受け入れることで、日本社会が変わる!?

――ツイッターやフェイスブック、私たちが何気なく利用するソーシャルメディア上で、政治家の個人アカウントを目にする機会が増えてきました。ところが、公職選挙法に定められた選挙運動期間に入ると、新しいツイートも政治家個人のブログ更新もぱったりと止まっていたのが、2012年末の衆院選までのこと(一部例外もあり)。それはなぜだったのでしょうか? その答えからわかるのは、公職選挙法が実現しようとした選挙戦環境のありよう、そしてその基となる理念です。
一般市民による選挙関連のツイートやYouTubeへの動画投稿も、場合によっては合法とはいえなかった、という意外な事実に驚かされます。日常の中でほとんど意識することのない法律ですが、公職選挙法はそもそも何を実現しようとしたものだったのか? 改正によって何が可能になり、その影響は日本社会、私たち個人にどう及ぶのか? まさに、「制度だけでなく、これは思想の問題だ!」

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概要

2013年参院選目前、「ネット選挙」解禁を、新進気鋭の研究者が解説。日本における、その影響力と起こりうる変化を明らかにする!

目次

序章:ネット選挙とは何か?
 1.政治がインターネットに近づこうとした日
 2.ネット選挙が意味すること―インターネット投票はできません
 3.選挙で利用できる「文書図画」

1章:間違いだらけのネット選挙論
 1.なぜ政治家は選挙運動が始まった途端にオフラインになったのか?
 2.ネット選挙の禁止は「時代遅れ」か? その解禁は「時代の必然」か?
 3.ネット選挙にはお金がかからない?
 4.ネット選挙で日本の政治環境が変わる?
 5.やってみないとわからないのだから、やるべき?
 6.ネット選挙の本質はなにか?

2章:ネット選挙解禁の土壌、日本の事情
 1.情報化日本のインターネット・SNS
 2.インターネットの設計思想―漸進的改良主義と反権威の系譜

3章:2012年までの日本のネット選挙の歴史
 1.1990年代のネット選挙問題
 2.2000年代に高まった、野党主導の解禁の機運
 3.ネット選挙解禁を望む民間の動き
 4.民主党政権下で、ついに与野党合意に至る

4章:2012年衆院選から2013年の動向
 1.「雄弁でありたい政治家」たちの攻防戦
 2.ソーシャルメディアと「雄弁な有権者」
 3.マスコミも注視する“情報と政治”
 4.ソーシャルリスニングとインフォグラフィクスの登場
 5.与党自民党が主導した2013年のネット選挙解禁

5章:ネット選挙を考えるためのヒント
 1.海外のネット選挙事情―アメリカ・韓国のケース
 2.変化仮説と正常化仮説

6章:日本の議員たちとソーシャルメディア―「ツイッター議員」の登場
 1.なぜ数あるソーシャルメディアのなかでツイッターなのか?
 2.「ツイッター議員」を分析する
 3.ツイッターの技術特性は、ほとんど引き出されていない
 4.なぜ、日本の政治化たちはツイッターを“有効活用”しないのか

7章:ネット選挙解禁がもたらす変化
 1.候補者と政党―“先進的なネット選挙に取り組む政治家”という称号の魅力
 2.有権者
 3.ネットメディア
 4.マスメディア

終章:ネット選挙が日本の民主主義をよくするには?
 1.デジタル・デモクラシー再考
 2.オープンガバメントの手段としてのネット選挙
 3.出発点としてのネット選挙解禁
 4.技術論に終始するネット選挙の議論を超えて

著者プロフィール

西田 亮介  【著】
にしだ りょうすけ

立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授(有期)。
1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。
同助教(有期・研究奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報センターリサーチャー、東洋大学・学習院大学・デジタルハリウッド大学大学院非常勤講師等を経て現職。
共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、共著分担執筆に『大震災後の社会学』(講談社)、『グローバリゼーションと都市変容』(世界思想社)他。
専門は情報社会論と公共政策学。情報と政治、ソーシャルビジネス、協働推進、地域産業振興等。