ヤバい社会学
~一日だけのギャング・リーダー~
シカゴの麻薬売人ギャングの懐に飛び込んだ社会学者ヴェンカテッシュの話は、ベストセラー『ヤバい経済学』で取り上げられて世界中の注目を集めた。本書は、彼がギャングとつるんだ冒険と災難の日々の全貌を明らかにした地下経済ノンフィクションだ。
アメリカ最悪のゲットーの一つ、シカゴのロバート・テイラー・ホームズで、ヴェンカテッシュはギャング・リーダー、ヤクの売人、ヤク中、ホームレス、売春婦、ポン引き、活動家、警官、自治会長、役人たちと知り合う。そこには、ギャングと住民のあやしく複雑な関係と貧しいなかで必死に生きる人々の姿があった。
ゲットーに生まれ、大学を出て就職しながらギャング・リーダーとしてゲットーに戻って来たJTと、中流家庭出身で、怖いもの知らずの社会学者ヴェンカテッシュの間の不思議な友情を描いた話題の書。
アメリカでは映画化権が取得され、ペーパーバック版も発売された。ギャングにも「取締役会」なるものがあり、売人の取りまとめをするリーダー(中間管理職)には様々な苦労があるなど、ギャングも一般企業もあまり変わりないことが興味深い。また、大麻の蔓延や格差の拡大と固定化、警察や行政の腐敗といった問題は決してアメリカだけの問題ではなく日本でも他人事ではないという点で、これからの日本社会を考える上でもお勧めの一冊だ。
第1章 貧しい黒人なのってどんな感じ? 第2章 フェデラル・ストリート、はじめの一歩 第3章 誰かがぼくを見守ってる 第4章 一日だけのギャング・リーダー 第5章 ベイリーさんのご近所 第6章 シノギする人される人 第7章 ブラック&ブルー 第8章 いっしょにいようよギャング
スディール・ヴェンカテッシュ
コロンビア大学教授。
専門は社会学とアフリカ系アメリカ人研究。アメリカの貧困について膨大な著作がある。現在は、フランスとアメリカの都市部の貧困層の比較研究を行っている。ヴェンカテッシュの手による専門書、逸話、ドキュメンタリーは、『アメリカン・プロスペクト』誌、『ディス・アメリカン・ライフ』誌、『ザ・ソース』誌といった雑誌や、PBS、ナショナル・パブリック・ラジオなどで取り上げられている。