被災地の人のために、自分にできることはないか。
2011年3月11日の東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故以来、福島県浜通り地区で活動を続けている医師による大震災以降の1年間の記録。
行政や業界団体の「建前」ばかりを強調した情報ではなく、具体的な事実とデータに基づいて、被災地に取り残された患者・医療関係者の姿や、避難所・仮設住宅の住人のストレス問題、遠隔地に避難した高齢患者たちの問題など、「見捨てられた」状況にあった福島県浜通りで何が起きていたか、また国内外の有志と連携しながら医療再生に動く被災地の状況、例えば南相馬市立総合病院の内部被曝調査、相馬市の仮設住宅の健康管理などの長期復興を支える現場が描かれています。
大震災以前から存在していた福島の医師不足問題の背景にある戊辰戦争以来の教育投資の不足問題など、現在の福島の医療問題には、医療の原点は何か、日本の医療制度の問題は何かが、凝縮されたかたちで現れています。現場の若手医師からも注目されている医療レポート。
1 震災当日、行田市にて 2 いわき市、透析患者大搬送 3 地震医療ネットワーク 4 相馬市との出会い 5 若き医師たちの奮闘 6 相双地区の歴史 7 孤立する南相馬市 8 飯舘村での健康診断 9 相馬市での健康診断 10 地域を回っての説明会 11 内部被曝調査 12 拡がる支援の輪 13 外部被曝と除染に向き合う 14 被災地に医学部を 15 教育こそ、福島復興の基本
上 昌広
かみ まさひろ
東京大学医科学研究所特任教授、内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。
1968年生まれ。兵庫県出身。東京大学医学部医学科卒業、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員を経て現職。
「現場からの医療改革」を目指し活動を行う。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。