大震災に学ぶ社会科学 第8巻 震災から見える情報メディアとネットワーク

池田 謙一編/安田 雪執筆/田中 淳執筆/稲増 一憲執筆/柴内 康文執筆/会津 泉執筆
2015年6月26日 発売
定価 3,780円(税込)
ISBN:9784492223635 / サイズ:サイズ:A5判/ページ数:314

本書の目的は、2011年3月11日の東日本大震災を生き抜いた人々が、震災後の新しい世界に適応していくために、どのように情報メディアや周囲の人々から情報を得てきたかを、実証データに基づいて多角的な視点から描こうと試みるものである。新しい世界への適応とは、災害によって生じた状況を受けとめ、心理的に反応し、社会的に行動することで事態に対処していくことを指す。本書では適応がどこまで情報メディアの利用行動と利用可能性の産物であったかを明らかにする。

全体の構造は、第1に東日本大震災時の情報環境であったマスメディアとインターネットがもたらした情報の様相を検討する、第2に情報行動調査の分析として、被災地・非被災地市民のコミュニケーション・心理・行動を被災後1年半の時点までにおいて精査する、第3に情報メディアの多重化と情報行動の適応性とを考察し、情報疎外についての知見を深める、最後に防災・減災のためのメディア接触のあり方を検討する、の4点から成り立っている。

本書では、まず、メディアが同時並行的に利用可能なように「多重化」されてきた歴史的経緯と、災害時にも接触しうるメディアが確実に存在する必要性を検討する(第2章)。そして東日本大震災において、マスメディアとインターネットの双方が合わせて総体的にどんな情報環境を形成していたかの検討を行う(第3~4章)。

第3章と第4章では社会に流通した情報のマクロな全体像を描く。第5章から第7章では、情報の受け手であり発信者である人々の情報受発信の姿を描き、マクロの情報環境の下で人々がどう行動したのかを、ミクロの姿として描かれている。

第8章では多重化されたメディアそれぞれの機能を分析しつつ、多重のメディアの下でさえ適切な情報に接し損なう「情報疎外者」が生じ、心理的・社会的不適応の可能性があることを示す。

以上の分析を踏まえて最後の第9章では、今後の防災・減災に関するメディア接触への含意と教訓を考察する。

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概要

大震災を生き抜いた人々が、震災後の新しい世界に適応していくため、どのように情報メディアや周囲から情報を得てきたかを描く。

目次

第1章 震災時・震災後の情報メディア環境が受け手に与える心理的・社会的インパクト
第2章 震災復興過程における情報メディアの役割に関する研究状況の概括
第3章 テキストデータを用いた震災後の情報環境の分析
第4章 震災期の新聞・TV、ヤフートピックス、ブログ記事と投稿の特徴
第5章 災害時における情報メディアの効果的活用のために――災害時に求められる情報支援のあり方とは
第6章 被災三県情報行動パネル調査2011-2012
第7章 首都圏住民の震災経験とその心理・行動変化
第8章 必要な情報が届くために:情報環境と受け手の対応関連性・整合
第9章 震災復興過程におけるメディア論からの教訓

著者プロフィール

【編者】
池田 謙一 いけだ・けんいち
同志社大学社会学部・大学院教授。1978年東京大学文学部卒業、1992年東京大学文学部助教授、2000年東京大学大学院教授などを経て、2013年より現職。著書:『新版 社会のイメージの心理学』(サイエンス社、2013年)、Social Networks and Japanese Democracy (S.Richeyと共著、Routledge、2011年)、Political Discussion in Modern Democracies (編著、Routledge、2010年)、『社会心理学』(共著、有斐閣、2010年)、『クチコミとネットワークの社会心理』(編著、東大出版会、2010年)、他多数。

【執筆者】
安田 雪 やすだ・ゆき
関西大学社会学部教授

田中 淳 たなか・あつし
東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長・教授

稲増 一憲 いなます・かずのり
関西学院大学社会学部准教授

柴内 康文 しばない・やすふみ
東京経済大学コミュニケーション学部教授

会津 泉 あいず・いずみ
情報支援プロボノ・プラットフォーム(iSPP)共同代表、多摩大学情報社会学研究所教授・主任研究員、ハイパーネットワーク社会研究所所長・理事長