近代の虚妄

現代文明論序説

佐伯 啓思著
2020年10月9日 発売
定価 3,080円(税込)
ISBN:9784492223963 / サイズ:四六/上/496

「ポピュリズム」「ニヒリズム」に象徴される近代の危機を乗り越えられる思想はあるのか。
「グローバリズム」と対峙するアフターコロナの価値観とはなにか。
西洋近代の限界を縦横無尽に論じ、日本思想の可能性を探る。
「当代随一の思想家」による「近代論」の集大成であり、「知の巨人」が新境地を開拓する主著。

トランプに象徴されるポピュリズム現象。
しかしこれは今に始まったことではない。すでに1930年代のナチス台頭から始まっていたことだ。
その原動力となったのは「ニヒリズム」。何も信じられない事態に絶望し、疲れきったため、その時々の状況に身を任せ、流れるように生きるという態度である。
これが後にユダヤ人大虐殺の「ホロコースト」につながっていった。
現在、先進各国を覆い尽くしているのも、こうした「近代の病」であるニヒリズムである。
近代のこのような虚妄≒ニヒリズムを乗り越えることは可能なのか。
その可能性として日本思想、とりわけ西田幾多郎「無の思想」などに象徴される京都学派に再び光を当てつつ、西洋近代思想と比較分析。
その現代的価値を問い直す。

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概要

ポピュリズムとニヒリズムを乗り越え、アフターコロナに求められる思想とは何か。知の巨人が西洋近代の限界と日本思想の可能性を探る

目次

序論 新型コロナウイルスと現代文明

1章 フェイクの時代の民主主義

2章 「歴史の終わり」と「歴史の危機」

3章 「西洋の没落」に始まる現代

4章 ハイデガーの問いと西洋文化の帰結

5章 「ニヒリズムの時代」としての近代

6章 科学技術に翻弄される現代文明

7章 暴走する「グローバル資本主義」――経済学の責任

8章 「無の思想」と西田哲学

9章 日本思想の可能性

著者プロフィール

佐伯 啓思  【著】
さえき けいし

1949年奈良県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科博士課程単位取得。
広島修道大学専任講師、滋賀大学教授、京都大学大学院教授などを歴任。
著書に『隠された思考』(筑摩書房、サントリー学芸賞受賞)、『「アメリカニズム」の終焉』(TBSブリタニカ、NIRA政策研究・東畑記念賞受賞)、『現代日本のリベラリズム』(講談社、読売論壇賞受賞)、『さらば、民主主義』(朝日新書)、『西田幾多郎』『死と生』(以上、新潮新書)、『経済成長主義への訣別』(新潮選書)など。
現代文明や日本思想についての言論誌『ひらく』(A&F BOOKS)の監修も務めている。