ノスタルジアは世界を滅ぼすのか

ある危険な感情の歴史

アグネス・アーノルド=フォースター著/月谷 真紀訳
2025年8月27日 発売
定価 2,420円(税込)
ISBN:9784492224311 / サイズ:四六/並/386

あなたの「懐かしい」は誰かの「武器」になる。
人類史上、最も危険で、最も癒され、最も儲かる「エモい」感情の正体。
政治やビジネスを動かし、消費を煽る、知られざる力とは。

本当に「昔は良かった」のか。
「希望は過去にしかない」のか。
時代を超えて誰もが持つ複雑かつ普遍的な感情の魅惑的な歴史とは。
過去5世紀にわたる影響力と、その両義性の謎を明らかにする。
BBC、ガーディアン、タイムズ、ザ・テレグラフ、VOGUE絶賛!

「あの頃は良かった」という、甘くも切ない感情「ノスタルジア」。
その根源は17世紀スイスの「望郷病」にあり、兵士や奴隷の死因となる病とされた。
しかし時代とともにその姿を変え、20世紀以降は消費者の購買意欲を刺激する「ノスタルジア産業」へと変貌。
さらに現代では、トランプ大統領のスローガン「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国に)」に象徴されるように、政治家が有権者の心を掴むための戦略としても利用されている。
本書は、世の中を動かす「危険な感情」としてのノスタルジアの変遷を読み解き、その知られざる力と巧妙なメカニズムを解き明かす。

トランプが2016年に続き再び「アメリカを再び偉大な国に」というノスタルジックなスローガンを掲げて大統領選に勝利してしまったことなどから、ノスタルジアは保守的で後ろ向きな感情だと悪いイメージを持っている人のほうが多いのかもしれない。
だが、ノスタルジアは必ずしも有害な感情ではない。
17世紀では「死に至る病」とも考えられていたノスタルジア。しかし、脳科学が発達した現代では「古き良き時代」を思い出すときに抱く懐かしい気持ちにセラピー効果があることもわかってきた。過去のシンプルな日々への憧れとして、商品や「ミニマリズム」のようなコンセプト、さらには政策を売り込むために広告代理店や政治家がノスタルジアを利用することまで行われている。ノスタルジアは良くも悪くも社会的、政治的感情であり、社会的に有効に利用される反面、悪用されやすくもあり、時代の不安を反映するものであり続けている。本書では、ノスタルジアの複雑な感情の魅惑的な歴史が、過去5世紀にわたってどのように発展してきたかを鮮やかに探る。

【主要目次】
序 章 本当に「昔は良かった」のか?

第1章 「望郷の病」と乳搾り女と傭兵

第2章 死を招くノスタルジア

第3章 故郷喪失者のホームシック

第4章 ノスタルジアの心理学

第5章 ノスタルジアの波

第6章 感情を収益に変える方法

第7章 「古き良き時代」の創造

第8章 ノスタルジアが政治を動かす

第9章 ノスタルジアが癒やす脳と心

第10章 ノスタルジアの名誉回復

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概要

本当に「昔はよかった」か。誰もが持つ複雑かつ普遍的な感情の歴史とは。政治・社会・経済・ビジネスへの影響力と、その謎を明かす。

目次

序 章 本当に「昔は良かった」のか? 

第1章 「望郷の病」と乳搾り女と傭兵 

第2章 死を招くノスタルジア 

第3章 故郷喪失者のホームシック 

第4章 ノスタルジアの心理学 

第5章 ノスタルジアの波 

第6章 感情を収益に変える方法

第7章 「古き良き時代」の創造 

第8章 ノスタルジアが政治を動かす 

第9章 ノスタルジアが癒やす脳と心 

第10章 ノスタルジアの名誉回復

著者プロフィール

アグネス・アーノルド=フォースター  【著】
あぐねす・あーのるど=ふぉーすたー

歴史学者。ロンドン大学キングス・カレッジで博士号を取得。エディンバラ大学、マギル大学、UCL、ロンドン大学キングス・カレッジ、ロンドン大学クイーン・メアリー校感情史研究センターでも勤務。がんと手術に関する2冊の学術書の著者であり、学術誌、医学誌、主要誌に幅広く執筆している。また、BBCラジオやテレビに出演し、テレビドラマやドキュメンタリーのコンサルタントを務め、科学博物館、ウェルカム図書館、王立看護協会と緊密に協力している。ロンドン在住。

月谷 真紀  【訳】
つきたに まき

翻訳家。上智大学文学部卒業。訳書に『ストーリーが世界を滅ぼす――物語があなたの脳を操作する』『カオスの帝王――惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち』(以上、東洋経済新報社)、『政府は巨大化する――小さな政府の終焉』(日本経済新聞出版)、『時間・自己・幻想――東洋哲学と新実在論の出会い』(PHP新書)、『自分で「始めた」女たち――「好き」を仕事にするための最良のアドバイス&インスピレーション』(海と月社)、『大学なんか行っても意味はない?――教育反対の経済学』(みすず書房)などがある。