派遣法の規制強化で
雇用機会が失われる
労働市場改革をめぐっては大きな誤解がある。現在は、労働市場改革にとって冬の時代であり、民主党政権による派遣法の改正により「有期雇用などへの規制強化」が行われると雇用機会は失われる。「求職者・スタッフのための規制改革」という労働市場改革のミッションは不変であり、揺るがないものである。
労働市場改革の本当の姿とはどのようなものであるべきか。本書は、労働市場法の形成の過程から説き起こし、「求職者・スタッフのための規制改革」へつなげるための道筋を示唆している本格的な提言の書といえる。
第1部 労働市場法の形成 ――国家独占の放棄から市場化テストへ 第1章 職業紹介の国家独占 ――独占政策の放棄に向けたシナリオ 第2章 中身が異なる許可制 ――アメリカの民営職業紹介事業規制 第3章 有料より厳しい規制 ――法改正前の無料職業紹介事業規制 第4章 時代錯誤の募集規制 ――職業安定法改正の意義と限界 第5章 問われる改革のスピード ――韓国における職業安定法の改正 第6章 市場化テストへの道 ――職業紹介は誰がするのか 第2部 スタッフのための規制改革 第7章 派遣スタッフの声と法改正 ――1999年の派遣法改正を受けて 第8章 雇用創出と派遣法の規制緩和 ――2003年の法改正を前にして 第9章 事業所内請負をどう考えるか ――製造業務の派遣解禁を前にして 第10章 製造現場と期間制限問題 ――実現可能な解決策を求めて 第11章 ヨーロッパはモデルとなるか ――欧州主要国における派遣規制 第3部 逆風のなかで明日を考える ――エビデンスに基づく冷静な議論を 第12章 派遣先による派遣労働者の直接雇用 ――正すべき誤解 第13章 採用の自由とその制約 ――求められる慎重な議論 第14章 採用の自由とその制約 続 ――派遣法改正案の批判的検討 終 章 発言 2007~2010
小嶌典明
こじま・のりあき
大阪大学大学院高等司法研究科教授
1975年神戸大学法学部卒業。82年同博士後期課程単位取得退学。82年富山大学講師、84年同助教授、93年大阪大学法学部助教授、95年同教授、2004年より現職。専攻は労働法。経済審議会行動計画委員会、規制改革委員会、総合規制改革会議、規制改革・民間開放推進会議などの委員・参与・専門委員を歴任。
主な著書に『目で見る労働法教材(第2版)』(共著、有斐閣)、『欧米の社会労働事情』(共著、日本ILO協会)、『職場の法律は小説より奇なり』(講談社)などがある。