経済学と障害学の対話から何が生まれるのか
どうしたら「障害者」を社会に適応させられるか、ではなく、どうしたら社会を「障害者」に合わせて作れるかを考える、というところからスタートした学際研究の成果の第一弾。
法学、社会学、教育学、経済学、障害学などの異分野の研究者たちが改めて「障害」とは何かを考える。
はしがき 序 章 社会の中の障害者 ――なぜ、「障害」を問い直さなければならないのか? 松井彰彦 第1章 顔の異形(いけい)は「障害」である ――障害差別禁止法の制定に向けて 西倉実季 第2章 障害女性の貧困から見えるもの 臼井久実子・瀬山紀子 第3章 きょうだい――文化と障害 河村真千子 第4章 障害者制度改革の取組み ――日本の障害者制度の課題 長瀬修 第5章 「ふつう」の人の国の障害者就労 松井彰彦 第6章 知的障害の歴史――イギリスと日本の事例 大谷誠・山下麻衣 第7章 障害者は「完全な市民」になりえるか? 星加良司 第8章 ディスアビリティ経験と公/私の区分 飯野由里子 第9章 差別禁止法における障害の定義 ――なぜ社会モデルに基づくべきか 川島聡 第10章 障害等級を定めることの困難性 関口洋平 第11章 「障害を定義する」ということ 坂原樹麗・佐藤崇 終 章 盲ろう者と障害学 福島智
松井彰彦
まつい あきひこ
東京大学大学院経済学研究科教授。東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学M.E.D.S.にてPh.D.(Managerial economics and decision sciences)取得。ペンシルバニア大学経済学部助教授、筑波大学社会工学系助教授を経て現職。主な研究分野は理論経済学、ゲーム理論、障害と経済の理論。
著書に『高校生からのゲーム理論』(ちくまプリマー新書、2010年)、『向こう岸の市場(アゴラ)』(勁草書房、2007年)、『市場(スーク)の中の女の子(PHP研究所、2004年)』、『慣習と規範の経済学』(東洋経済新報社、2002年、第46回日経・経済図書文化賞受賞)など。エコノメトリック・ソサエティ、フェロー(終身特別会員)、理事。「ゲーム理論の観点から社会現象全体を解釈しようとする研究」により、学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞受賞。国際的な業績を挙げた45歳未満の経済学者に贈られる日本経済学会中原賞受賞。
川島 聡
かわしま さとし
東京大学大学院経済学研究科特任研究員。新潟大学大学院現代社会文化研究科修了。博士(法学)。内閣府障がい者制度改革推進会議・差別禁止部会構成員。ハーバード・ロースクール客員研究員。主な研究分野は国際人権法、ディスアビリティ法。
著書に『障害者の権利条約と日本─概要と展望』(共編著、生活書院、2008年)、『概説 障害者権利条約』(共編著、法律文化社、2010年)など。
長瀬 修
ながせ おさむ
東京大学大学院経済学研究科特任准教授。上智大学外国語学部卒業。Institute of Social Studies(オランダ)にて修士号取得。青年海外協力隊(ケニア)、八代英太参議院議員秘書、国連職員(オーストリア、米国)、東京大学先端科学技術研究センター特任助教授等を経て現職。インクルージョン・インターナショナル(国際育成会連盟)理事、内閣府障がい者制度改革推進会議構成員。主な研究分野は障害学。
著書に『障害学への招待』(共編著、明石書店、1999年)、『障害者の権利条約と日本』(共編著、生活書院、2008年)など。