◆コメント
社会的選択理論においては、経済システムの設計や経済政策の立案など、個人の福祉・権利・自由に影響を及ぼす社会的な選択を、個人の自律的な選択評価を情報的な基礎として合理的に説明することが試みられる。しかし個人的評価と社会的選択の連結方法に関しては難問があり、この難問を解消する可能性を論理的に追求するとともに、民主主義と自由主義を支える組織の編成原理を模索することに本書の目的がある。社会的選択の現代理論となったK・J・アローの理論を継承しつつ、それを大幅に拡張したA・センに繋がる流れを概説した労作。経済学の規範的側面に、厚生経済学と社会的選択の理論から焦点を当てている。
第1)部 経済計画理論 第1章 プロローグ 第2章 囚人のディレンマと集団的行動 第3章 社会的目標の民主的形成 第4章 社会的選択と個人的誘因の両立可能性 第5章 公共財配分の誘因両立的メカニズム 第6章 社会的選択と市民的自由 第7章 エピローグ 第2)部 四半世紀後の社会的選択の理論 第8章 アローの定理:簡潔な証明 第9章 パレート効率性・単調性・戦略的操作の不可能性 第10章 社会的選択の実装メカニズム 第11章 規範的経済学の情報的基礎:厚生主義・帰結主義・非帰結主義 第12章 複数世代間の社会的選択