日本は昭和の時期の公害問題を克服し、エネルギー効率も最高水準となったにもかかわらず、環境をめぐる問題はまだ多く残されている。
福島第一原子力発電所の事故にともなう未曾有の環境汚染、地球温暖化への取り組みにおける京都議定書の第2約束期間からのコミットの停止という後退、再生エネルギーの固定価格買取制度(FIT)で起きた問題と見直し、一般ゴミ償却による有害物質(ダイオキシン)の拡散の悪化。……。
それらの解決には科学技術の開発とともに、「仕組み」や「インセンティブ(誘因)」の問題に関連した経済学が果たすべき役割がある。
本書は、環境とエネルギーの問題を経済学から読み解く入門テキストである。文系・理系を問わず、誰のために環境を改善するのか、利害関係が錯綜する時にはどのような基準で考えるべきなのか、問題の性格に応じてどのような解決策が望ましいのか、その成功の程度はどのように測定すればよいのか、など環境問題の様々なレベルで留意すべき問題を対象にしています。
●本書では「環境とエネルギーの経済学」では以下のような問題を扱います。
①環境とエネルギーに関する行動を経済学的に説明する。
②環境とエネルギーに関する望ましい状態や政策について経済学を使って提案する。
③環境とエネルギーに関する制約の経済への影響を分析する。
④経済活動と、環境やエネルギーとの相互関係を分析する。
⑤環境の価値を経済的に評価する。
●入門レベルですが、より問題を深く学ぶために以下の3点に留意して構成されています。
第1は、実例を多く盛り込み、多くの章でコラムを設けています。
第2は、自然科学的な知識もある程度は盛り込んだことであります。環境問題やエネルギー問題の多くは自然科学的な現象と密接に関係しているからです。
第3は、意思決定のあり方についても意識的に取り上げています。環境やエネルギーの問題を解決するためには社会的な取り組みが必要なことが多く、そのためには社会的意思決定が不可欠であるからです。
地球温暖化をめぐる京都議定書、原発事故、FIT制度の混乱など、環境とエネルギーの課題を解決するためには、科学技術のみならず、「仕組み」と「インセンティブ」の問題に関連した経済学が重要な役割を果たします。問題と解決へのアプローチを考えるための入門テキスト。