入門テキスト 環境とエネルギーの経済学

大守 隆著
2016年11月25日 発売
定価 2,860円(税込)
ISBN:9784492314876 / サイズ:A5/並/280

日本は昭和の時期の公害問題を克服し、エネルギー効率も最高水準となったにもかかわらず、環境をめぐる問題はまだ多く残されている。
福島第一原子力発電所の事故にともなう未曾有の環境汚染、地球温暖化への取り組みにおける京都議定書の第2約束期間からのコミットの停止という後退、再生エネルギーの固定価格買取制度(FIT)で起きた問題と見直し、一般ゴミ償却による有害物質(ダイオキシン)の拡散の悪化。……。
それらの解決には科学技術の開発とともに、「仕組み」や「インセンティブ(誘因)」の問題に関連した経済学が果たすべき役割がある。
本書は、環境とエネルギーの問題を経済学から読み解く入門テキストである。文系・理系を問わず、誰のために環境を改善するのか、利害関係が錯綜する時にはどのような基準で考えるべきなのか、問題の性格に応じてどのような解決策が望ましいのか、その成功の程度はどのように測定すればよいのか、など環境問題の様々なレベルで留意すべき問題を対象にしています。

●本書では「環境とエネルギーの経済学」では以下のような問題を扱います。
①環境とエネルギーに関する行動を経済学的に説明する。
②環境とエネルギーに関する望ましい状態や政策について経済学を使って提案する。
③環境とエネルギーに関する制約の経済への影響を分析する。
④経済活動と、環境やエネルギーとの相互関係を分析する。
⑤環境の価値を経済的に評価する。
●入門レベルですが、より問題を深く学ぶために以下の3点に留意して構成されています。
第1は、実例を多く盛り込み、多くの章でコラムを設けています。
第2は、自然科学的な知識もある程度は盛り込んだことであります。環境問題やエネルギー問題の多くは自然科学的な現象と密接に関係しているからです。
第3は、意思決定のあり方についても意識的に取り上げています。環境やエネルギーの問題を解決するためには社会的な取り組みが必要なことが多く、そのためには社会的意思決定が不可欠であるからです。

地球温暖化をめぐる京都議定書、原発事故、FIT制度の混乱など、環境とエネルギーの課題を解決するためには、科学技術のみならず、「仕組み」と「インセンティブ」の問題に関連した経済学が重要な役割を果たします。問題と解決へのアプローチを考えるための入門テキスト。

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概要

課題解決には、「仕組み」と「インセンティブ」に関連する経済学が重要な役割を果たす。幅広いレベルの課題に取り組むための入門書。

目次

はじめに
第1章 環境とエネルギーの経済学では何を学び、何を問題にするのか
第2章 外部性の経済学
第3章 枯渇性資源と持続可能性
第4章 不確実性と情報の経済学
第5章 政策手段と部分均衡分析
第6章 環境税
第7章 排出権取引
第8章 社会的意思決定
第9章 環境評価
第10章 環境の経済的価値
第11章 環境とエネルギーの技術
第12章 経済成長・経済発展と環境
第13章 地球温暖化問題と日本の選択
第14章 日本のエネルギー政策
第15章  経済活動の国際化と環境・エネルギーの課題
復習問題の解答
おわりに
索引

著者プロフィール

大守 隆  【著】
おおもり たかし

東京大学工学部卒業、英国オックスフォード大学経済学博士。
旧経済企画庁で、計量分析や『経済白書』の作成などに携わる一方で、東京大学教養学部講師、国立環境研究所地球環境経済モデル検討会委員、大阪大学経済学部教授などを歴任。その後、内閣府で、国際経済業務や経済統計などの分野に従事する。退官後は、外資系証券会社のチーフエコノミスト、統計委員会委員・統計基準部会長、内閣府政策参与・APEC経済委員会議長、東京都市大学環境学部教授などを経て、現在は国立研究開発法人科学技術振興機構・社会技術研究開発センター領域総括(持続可能な多世代共創社会のデザイン領域)。
主な著書に、『介護の経済学』(共著)、『ソーシャル・キャピタル――現代経済社会のガバナンスの基礎』(共編著)、『日本経済読本』(第15、16、19、20版、共編著)(以上すべて東洋経済新報社)がある。