緊縮資本主義

経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか

クララ・E・マッテイ著/中野 剛志解説/井坂 康志訳
2025年7月30日 発売
定価 3,740円(税込)
ISBN:9784492315651 / サイズ:四六/上/432

トマ・ピケティ、ヤニス・バルファキス、チョムスキー、マリアナ・マッツカート絶賛!

実質賃金を下げ、戦争と全体主義を招く真犯人とは?
⇒「財政」「金融」「産業」の三位一体の「緊縮」構造
⇒経済学者とテクノクラートの結託による「脱政治化」

緊縮財政は単なる財政健全化の手段ではなく、資本主義体制を維持するための階級戦略だった!
気鋭の経済史家による革命的野心作


〈当代きっての研究者たちが絶賛!〉
第一次世界大戦後のヨーロッパにおける緊縮政策の台頭と、それがいかにしてファシズムへの道を開いたか――今日の経済政策の多くとともに-――の魅力的な歴史。未来への重要な教訓を与えてくれる必読の書。歴史政治経済学の最高傑作――トマ・ピケティ

緊縮財政は無実の政策ミスではなく、暗黒の利益に機能する誤謬である。本書は、緊縮財政の隠された意図を暴いている――ヤニス・バルファキス

マッテイの新著は、新しい経済の物語を構築するための重要な貢献だ。インフレ率が上昇し、政府が再び 「ベルトを締めたい」と感じている今、本書はこれまでと同様に適切である――マリアナ・マッツカート

マッテイは、非政治的であるはずの経済学が、いかに階級抑圧のイデオロギーとして機能してきたか、そして現在も機能しているかを明らかにしている――ロバート・スキデルスキー

緊縮財政を単なる経済政策としてとらえるのではなく、下層階級が支配階級の嗜好に疑問を抱き始めた際に、資本主義体制を維持するための危機管理の一環として行われる政策と見なすならば、その甚大な被害にもかかわらず、なぜこれが繰り返されるのかが理解できる――マーク・ブライス

私たちが今生きている瞬間と驚くほど共鳴する。手放せない書だ――ジェームズ・K・ガルブレイス

政治と経済を切り離そうとする努力には長い歴史がある。クララ・E・マッテイによる非常に印象的な最近の研究は、この二項対立が、典型的には緊縮財政プログラムという形をとりながら、1世紀にわたって階級闘争の主要な手段であり、ファシズムへの道を開き、それは実際に西側のエリート世論に歓迎された、と説得力を持って論じている。――ノーム・チョムスキー

日本の実質賃金は長きにわたって伸び悩んでいる。実質賃金を引き上げるには、どうしたらよいのであろうか。それを知りたい人には特に、本書を薦めたい――中野剛志(本書解説)


緊縮財政の真の目的は経済の安定化ではなく、富裕層への富の集中と労働者階級の抑圧だった。
いかにして経済学者とテクノクラートが、一見「中立的」な経済政策を用いて、階級支配を強化し、民主主義を形骸化させてきたかを歴史的証拠と経済理論を駆使して分析。
単なる経済史にとどまらず、現代社会における所得格差や経済的強制の根源を探る。
「フィナンシャル・タイムズ」年間ベストブック(2022年)。

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概要

ピケティ、バルファキス、マッツカート絶賛!「緊縮」が戦争と全体主義と実質賃金抑制を招く。気鋭の経済史家による革命的野心作。

目次

【第Ⅰ部 戦争と危機】
 
第1章 第1次世界大戦と経済

第2章 新思想を奉ずる人々

第3章 経済民主化をめぐる闘争

第4章 新秩序ーー第1次世界大戦後の枠組みと思想の成立

【第Ⅱ部 緊縮策の持つ意味】

第5章 国際テクノクラートと緊縮の形成

第6章 イギリス緊縮物語

第7章 イタリア緊縮物語

第8章 イギリスから見たイタリア緊縮策とファシズム

第9章 緊縮策の勝利

第10章 恒久化する緊縮策

【日本語版解説】実質賃金停滞を招いている「財政・金融・産業の緊縮」と「脱政治化」(中野剛志) 

著者プロフィール

クララ・E・マッテイ  【著】
くらら・E・まってい

タルサ大学経済学部教授、同大学異端派経済学研究センター長。ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ経済学部准教授を経て2025年2月から現職。経済思想と技術主義的な政策決定との決定的な関係や、資本主義の歴史を研究している。初の著書である本書の原著『The Capital Order:How Economists Invented Austerity and Paved the Way to Fascism』(2022年)は、『フィナンシャル・タイムズ』紙で2022年の経済書ベスト10に選ばれ、10カ国語以上で翻訳され、アメリカ歴史学会のハーバート・アダムス・バクスター賞(2023年)を受賞した。緊縮資本主義のレンズを通して、資本主義の黄金時代(1945~1975年)とそのケインズ主義を批判的に再評価するプロジェクトを執筆中。『ガーディアン』『ジャコバン』『ネーション』、イタリアの全国紙『イル・ファット・クオティディアーノ』などに寄稿多数。


中野 剛志  【解説】
なかの たけし

評論家。1971年生まれ。東京大学教養学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2003年にNations and Nationalism Prize受賞。2005年エディンバラ大学大学院より博士号取得(政治理論)。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞)、『富国と強兵』(東洋経済新報社)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『政策の哲学』(集英社)など。

井坂 康志  【訳】
いさか やすし

ものつくり大学教養教育センター教授、ドラッカー学会共同代表理事。1972年埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学、博士(商学)。著書に『P・F・ドラッカー――マネジメント思想の源流と展望』(文眞堂、経営学史学会奨励賞)、『ピーター・ドラッカー──「マネジメントの父」の実像』(岩波新書)、訳書に『ドラッカー 教養としてのマネジメント』(共訳、マグロウヒル・エデュケーション)、『ドラッカーと私』(NTT出版)、『アメリカは内戦に向かうのか』(東洋経済新報社)などがある。