大衆市場はどのように成立したか
★本書で描かれているのは、19世紀末から20世紀初頭の約20年間にアメリカで起こった「大衆消費社会の誕生」である。この時代に生まれた大量生産消費財が、現代のライフスタイルにいかに幅広い影響を及ぼしているかを考えると、これは革命の名に値するものであった。
★ヒゲをそる習慣をつくった「ジレット」、写真を日常的なものにした「コダック」、石鹸の「P&G」、チューインガムを生み出した「リグレー」・・・・・本書ではそうした製品がいかにして大量に生産され、大量に宣伝され、大量に販売されるにいたったか、そしてその過程で人々のライフスタイルをどのように変えていったかが、数多くの貴重な写真やイラストとともに分析される。
★大部数雑誌に対するターゲット広告、アメリカ国内を往来するセールスマン、全国をネットワークするチェーンストアといった、現代ではもはやお馴染みの数々のシステムもまた、大衆市場の成立に欠かせないものとしてこの時期に確立した。
★だがビッグ・ビジネスの成立と近代的なマーケティング技術の発展のおかげで、かつての「顧客」は「消費者」に変貌させられて、モノを購入したり消費したりする以外に「満足感を確認する」ことができなくなった。また環境問題という新たな課題も突きつけられている。
★著者はたとえ一つの消費行動といえども、公的な原因と公的な結果を伴っており、完全に個人的なものではない、と考えており、今こそ政治の場で新たな戦略と政策を議論する必要があると訴える。
第1章 アメリカ的生活様式 第2章 商標ラベル 第3章 流通の連鎖 第4章 新しい製品と新しい習慣 第5章 市場の設計 第6章 販売と販売促進 第7章 新しい小売業 第8章 包装製品の政治学 第9章 エピローグ
スーザン・ストラッサー
Susan Strasser
リード大学で学士を,ニューヨーク州立大学ストーニィ・ブルック校でMA,Ph. D.を取得.ハーバード大学経営大学院経営史ニューコメン・フェローシップ(1985-86年度)等を経て,現在,デラウエア大学歴史学部教授.
アメリカの消費社会の歴史における研究には定評があり,『ニューヨーカー』誌で,「歴史が見捨てていたものを復活した」と称賛された.
これまでの著書に,Never Done: A History of American Housework ( Pantheon Books, 1982); Waste and Want: A Social History of Trash (Metropolitan Books/Henry Holt, 1999); A Historical Herbal: Healing with Plants in a Developing Consumer Culture (forthcoming)がある.
川邊信雄 [訳者]
かわべ・のぶお
現職:文京学院大学・文京学院短期大学学長、早稲田大学名誉教授。1945年広島県生まれ。
早稲田大学第一商学部卒業、同大学院商学研究科・オハイオ州立大学大学院(フルブライト奨学生)に進む。 博士(商学)早稲田大学、Ph. D.(オハイオ州立大学)。
著書:『総合商社の研究―戦前アメリカにおける三菱商事の海外活動』(実業出版、1982年)、『新版 セブンイーイレブンの経営史―日本型情報企業への挑戦』(有斐閣、2003年)、『タイトヨタの経営史』(有斐閣、2011年)。
訳書:マンセル・G. ブラックフォード/オースチン・カー著『アメリカ経営史』(監訳、ミネルヴァ書房、1988年)、マンセル・ G. ブラックフォード著『アメリカ中小企業経営史』(文眞堂、1996年5月)、アルフレッド・D. チャンドラー、ジュニア著『スケール・アンド・スコープ』(共訳、有斐閣、1993年)。