空洞化は震災で加速 新しい産業構造の構築が急務
東日本大震災の後、電力不足でモノが作れない、復興のためのおカネが必要、等々の問題が生じています。震災による電力コストの上昇は、日本製造業の海外移転への流れを加速させています。日本経済再活性化のためには、新しい産業で雇用を確保することが急務です。
著者は生産工程の思い切った海外展開や対外資産の取り崩しでおカネを作るなどの大胆な手法を提案します。ただ、日本経済は、古い産業を温存するための円安政策がとられていたがゆえに震災前から停滞し、「失われた20年」に陥っていた、という側面もあります。
原因は、緊縮財政と金融緩和という経済政策や自己防衛に懸命な企業経営者にあった、と著者は考えます。震災をきっかけに、古い制度や慣習を捨て、新しい日本経済を作ることはできるのでしょうか。日本経済に対して厳しい目を向けながら、脱工業化の発想で日本経済の復活も予感させる、ダイナミックな日本経済論。
第I部 脱工業化による復興 第1章 供給制約下での復興で何が問題となるか 第2章 対外資産で復興資金を賄える 第3章 震災後の日本を支えるのは、製造業ではない 第4章 ビジネスモデルの大転換はいかにして可能か? 第II部 「失われた20年」の失敗経験を復興に活かす 第5章 中国工業化に押された日本製造業の生き残り策 第6章 外需依存経済のメカニズム 第7章 工業製品価格と賃金が下落し、分配が不平等化 第8章 金融危機を惹起した輸出依存成長
野口悠紀雄
のぐち・ゆきお
1940年東京生まれ.63年東京大学工学部卒業.64年大蔵省入省.72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得.一橋大学教授,東京大学教授(先端経済工学研究センター長),スタンフォード大学客員教授,早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問.専攻はファイナンス理論,日本経済論.
主要著書 『情報の経済理論』(東洋経済新報社,1974年,日経・経済図書文化賞),『財政危機の構造』(東洋経済新報社,1980年,サントリー学芸賞),『土地の経済学』(日本経済新聞社,1989年,東京海上各務財団優秀図書賞,日本不動産学会賞),『バブルの経済学』(日本経済新聞社,1992年,吉野作造賞),『金融危機の本質は何か』(東洋経済新報社,2009年),『経済危機のルーツ』『1940年体制(増補版)』(東洋経済新報社,2010年),『日本を破滅から救うための経済学』(ダイヤモンド社,2010年),『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社、2011年)
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