大震災の教訓を世界へ発信することが日本を援助してくれた世界に対する恩返しだ!
今回の東日本大震災は、日本において「複合連鎖危機」を招いた。「危機管理」は国際的にも重大関心事となっており、その重要なケースとして注目されている。今回の大震災の問題を多角的に分析し、その教訓を世界に発信することこそが、日本を援助し励ましてくれた世界に対する責務といえる。
こうした問題意識に立ち、各分野の政策専門家10名を結集し、「新しい危機管理」の観点から分析・議論を行い集約されたのが本書である。
震災対応の成功事例、失敗事例を明確にしたうえで、グローバルな教訓が数多く引き出されている本書の議論は、2011年12月の東京でのシンポジウムを皮切りに、2012年冬開催のスイス・ダボス会議で発表される公式テキストであり、ニューヨーク、ボストン、ワシントンDC、ロンドンなどで開催予定の各セミナーでも、議論のたたき台となる予定。この成果は、英語・中国語・韓国語刊行物として発表される。
序 章 大災害と複合連鎖危機 第1章 国土と防災――大地震・津波被害と備え 第2章 復興と再生――消えた自治体・翻弄された自治体 第3章 東京の被災――試された災害対応力と国際競争力への影響 第4章 マクロ経済――大震災と日本経済 第5章 企業経営――サプライチェーンと事業継続 第6章 原発事故――福島原発事故をなぜ防げなかったか 第7章 電力供給――大震災と日本の電力供給体制 第8章 政治機能――ガバナンス危機の解剖 第9章 消費行動――自粛と萎縮からニューノーマルへ 第10章 情報通信――災害時情報通信基盤マネジメント
竹中平蔵 [編著者]
たけなか・へいぞう
慶應義塾大学総合政策学部教授/グローバルセキュリティ研究所所長(博士、経済学)
1951年生まれ。一橋大学卒業後、日本開発銀行、大蔵省主任研究官、ハーバード大学客員准教授などを経て現職。この間、2001-2006年小泉内閣において経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任。ワールド・エコノミック・フォーラムのファウンデーション理事会メンバー。アカデミーヒルズ理事長、公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、(株)パソナ取締役会長、(財)森記念財団都市戦略研究所長などを兼務。
船橋洋一 [編著者]
ふなばし・よういち
慶應義塾大学特別招聘教授(博士、経済学)
1944年生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、主筆を経て現職。この間、ハーバード大学ニーマンフェロー、米国際経済研究所(IIE)客員研究員、米ブルッキングズ研究所特別招請スカラー。インターナショナル・クライシス・グループ(ICG)執行理事。「日本再建イニシアティブ」財団理事長。