ゴールデン・サイクルⅡ
「ゴールデン・サイクル(黄金循環)」とは、短期、中期、長期、超長期の4つの景気循環のベクトルがすべて上向きになる状況を言います。著者である嶋中雄二氏ご自身が命名した言葉です。キッチン・サイクル(短期、在庫投資循環)とジュグラー・サイクル(中期、設備投資循環)が2012年に谷を付け、クズネッツ・サイクル(長期、建設投資循環)とコンドラチェフ・サイクル(超長期)がそれぞれ2010年と2001年に谷を付けて、現在は4つの波がすべて上昇局面に向かっているのです。
過去において、わが国でゴールデン・サイクルが発生したのは、①日露戦争時の1904~05年、②第1次世界大戦時の1916年、そして第2次世界大戦後に入り、③高度成長期における神武景気時の1957年、④岩戸景気時の1960~61年、⑤いざなぎ景気時の1967年の5回しかありません。日露戦争時から神武景気時までに経過した52年間と同様に、神武景気時から56年を経てやって来た今回のゴールデン・サイクルは、あたかも伊勢神宮と出雲大社の同時遷宮のように、私たち日本人に久々の夢と希望を与えてくれるものです。
著者によれば、今後の10年間でゴールデン・サイクルが、2013年からの景気の盛り上がりを含めて計3回やってきます。もちろん、今更
、高度成長の到来を願ったところで、そんな夢が叶うことはありえないでしょう。しかし、あの快進撃を可能にした日本人の前向きな姿勢には、今日の時代の私たちも参考になる点があることは確かです。アベノミクスによって、デフレの淵から再び立ち上がった日本経済の「再チャレンジ」の物語には、実はまだまだ続編があり、場合によっては、歴史的な勃興期につながる可能性も秘めているのです。
本書は、長く続いた低成長とデフレによって、現状を決して抜け出せない、構造的で宿命的な状況であると認識しつつあった多くの日本人の諦めの気持ちに対して挑戦し、もっと明るい将来が待ち受けていることを示そうとするものです。