日本を惑わす金融資産という幻想
なぜ世界一の資産大国で経済の大停滞が起こってしまったのか? なぜ、90年代以降の経済・財政政策はなぜ効果が出なくなかったのか? 「資産」と「負債」のバランスという視点から、日本経済が長期低迷に陥った真因を分析する。
もっと豊かになりたいということが、所得を増やすとか、もっと多くのモノやサービスを買いたいとかいうことであれば実現は可能だ。経済成長の理論は、技術進歩によってもっと多くのモノやサービスを生産するという意味で、より豊かになれると結論付けている。しかし、これまで日本の家計が望んできたように、所得を増やすだけでなく、所得に対してより多くの資産を保有するということはが実現できるだろうか?(中略)本書の主張は、日本経済は資産の厚みを増そうという努力が限界に突き当たっており、これまで通りの考え方で、もっと資産を増やして豊かになろうということに無理が生じているというものだ。その背景にあるのは、ストックとフローの比率を永久に上昇させることは不可能だというものであり、我々が今直面している経済の低迷は、その壁にぶち当たったからではないかという仮説である。(第1章より)