【編集者から】
あなたはどのようなときに幸福だと感じるでしょうか。テレビや映画を観ること、スポーツや趣味の園芸をすること、レストランで美味しい食事をとること、スタジアムで野球観戦すること・・・・・・。本書によれば、これらはどれも幸福感にわずかな影響しか与えません。一方、趣味のサークルやボランティア活動に月に一度参加するだけで、所得が倍増するのと同じくらいの幸福感が高まるそうです。また、解雇は幸福度を著しく下げ、同じ給与水準の別の仕事を得ても幸福度は元通りにならないという研究結果があります。
そうした研究の知見を政策に生かそうという動きが世界中であり、国内でも広まっています。近年、フランスではサルコジ大統領が政策決定に幸福を考慮することを公式に表明し、イギリスでもキャメロン首相が「GDPだけでなくGWB(General well-being:一般の幸福)にも焦点を当てて取り組むべきだ」と公言しています。日本でも2010年12月より内閣府に「幸福度に関する研究会」ができ、調査研究が進められています。また、地方自治体においても、東京都荒川区や熊本県、静岡県、京都府、福井県、福岡県、新潟市、さいたま市等で幸福度の測定やその向上のための施策が進められています。
本書では、経済学・政治学・心理学・哲学など多様な観点から幸福研究の新しい知見が示すと共に、経済成長・健康と病気・格差・経済成長・結婚と家族・教育・政府の質など様々な角度から分析し、幸福度研究をどのように政策立案に生かせるかを提言しています。
第1章 先行研究からの知見 第2章 幸福研究の信頼性 第3章 政策立案者は幸福研究を利用すべきか 第4章 成長の問題 第5章 不幸等にどう対処すべきか 第6章 経済的苦難の脅威 第7章 苦痛を軽減する 第8章 結婚と家族 第9章 教育 第10章 政府の質 第11章 幸福研究の意義
デレック・ボック
Derek Bok
1930年生まれ。ハーバード大学創立300周年記念教授。世界的に高名な法学者で、1971年から1991年までハーバード大学の学長をつとめた。法学、政治、教育の分野で多数の著作がある。著書に、The State of Nation、The Trouble with Governmentなど。
土屋直樹
つちや なおき
武蔵大学経済学部准教授.東京大学文学部卒.共著書に『労使関係の新世紀』日本労働研究機構,『企業が割れる! 電機産業に何が起こったか 事業再編と労使関係』日本評論社, 『社会政策1) ワークライフ・バランスと社会政策』法律文化社など.
茶野 努
ちゃの つとむ
武蔵大学経済学部教授.大阪大学経済学部卒,大阪大学博士(国際公共政策).住友生命,住友生命総合研究所,九州大学客員助教授を経て現職.著書に『国際競争時代の日本の生命保険業』,『予定利率引下げ問題と生保業の将来』東洋経済新報社.訳書に『統合リスク管理入門』ダイヤモンド社,『なぜ金融リスク管理はうまくいかないのか』東洋経済新報社など.
宮川修子
みやかわ しゅうこ
翻訳家.東京大学教養学部卒,ミシガン大学修士(経済学).プライスウォーターハウス,中前国際経済研究所,経済産業研究所などを経て現職.訳書に『国際投資へのパスポート』日本経済新聞社,『投資の心理学』,『13歳からの投資のすすめ』,『なぜ金融リスク管理はうまくいかないのか』東洋経済新報社,『カクテルパーティーの経済学』ダイヤモンド社など.