どのような為替レート制度が
東アジア経済の持続的成長をもたらすのか
東アジア経済は長らく、事実上のドル・ペッグ制を採用してきました。
ドル・ペッグ制は、為替レートの安定を通じて貿易を促進するとともに、金融政策の名目アンカーの役割を果たし、「東アジアの奇跡」と称賛される目覚ましい経済発展を支えました。
しかしながら、東アジア新興国の先進国経済へのキャッチアップが進み、産業の国際競争力が向上するとともに、金融・資本の自由化が進展すると、硬直的なドル・ペッグ制の弊害が次第に大きくなりました。アジア通貨危機を契機に、それが一気に表面化したと言えます。
為替レート制度の選択は、為替レートの安定性や柔軟性を決定するとともに、金融政策の独立性・有効性を左右します。また、マクロ経済の安定や貿易、経済成長に影響を与えます。
本書は、為替レート制度の選択が、先進国へのキャッチアップが進む東アジア新興国や急速な経済発展を遂げている中国の経済に及ぼす影響について分析を行い、東アジア経済が持続的な成長を続けるための条件となる為替レート制度のあり方について提言を行います。
第1章 為替レート評価と経済パフォーマンス 第2章 アジア通貨危機の教訓 第3章 ドル・ペッグ離脱の実態 第4章 コーポレート・ガバナンス改革 第5章 チェンマイ・イニシアティブ 第6章 世界金融危機の影響 第7章 中国経済が直面する課題 終 章 東アジア持続的成長の条件
金京拓司
きんきょう・たくじ
1963年東京生まれ。京都大学経済学部卒業。ロンドン大学経済学博士(Ph.D.)。財務省、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院客員研究員などを経て、現在、神戸大学大学院経済学研究科教授。専門は、国際金融、アジア経済。
主な論文に、"Explaining Korea's Lower Investment Levels after the Crisis," World Development, Vol.35(7), 2007; "Disorderly Adjustments to the Misalignments in the Korean Won," Cambridge Journal of Economics, Vol.32(1), 2008 などがある。