中国農村の過剰労働力は消滅したのか?
都市部労働者の賃金は上がり続けるのか?
――開発経済学の立場から東アジア各国の「ルイス転換点」を比較。そして特に、世界経済への巨大なインパクトを有する中国の労働市場を、制度面を含めたさまざまな視点から詳細に分析!
【中国語版・韓国語版との同時刊行!】
工業化の過程で農業部門の余剰労働力が底をつき、工業部門に雇用が奪われる時点を「ルイスの転換点」と呼ぶ。ルイスの転換点を過ぎると、労働力不足が生じ、賃金の上昇が起こるため、経済成長の過程において「ルイスの転換点」は重要なターニングポイントとなる。本書では、中国についてはまだその段階に達していないと考え、中国の労働市場の現状を実証分析により明らかにする。
第1部【東アジア主要国の経験:ルイス転換点を巡って】では、日本、韓国、インドネシア、中国、台湾と東アジア諸国のルイス転換点について、その歴史的経験をまとめる。そこから、ルイス転換点とはどんな状態を意味し、それを超えることでどんな影響が現れたのかを明らかに。さらに、他の国との比較から、改めて中国の現状を分析し、その特徴を明らかにする。
第2部【中国労働市場の構造変化:実態と要因】は、中国の労働市場のさまざまな側面の分析であり、本書の中心的な結論部分を支える背後の問題を整理している。
第3部は、全体の総括と結論となる。
本書の見解は、中国はいまだ転換点を通過しておらず、農村の過剰労働と一部都市の労働不足とが共存しているというものである。過剰労働が存続すれば所得・賃金格差は拡大し続け、全体の所得分布はいっそう悪化することになる。