賢すぎる支配者の悲劇
「戸籍の厳格な管理によって都市戸籍保有者と農村戸籍保有者のあいだの身分差別を維持することは、中国共産党にとって核心利益にかかわる問題であり、共産党独裁体制が続くかぎり廃止も緩和も望めない。
……それでは、中国の民衆、とくに全人口の約3分の2を占める農村戸籍保有者たちは、未来永劫にわたって、どんなに経済全体が発展してもほんのわずかなおこぼれしか頂戴できない状態に押しとどめられるのだろうか。
さいわいなことに、どうがんばっても現体制が維持できそうもない兆候が、あちこちから噴出してきた。」──「はじめに」より
「本書の内容は『全編、これ内政干渉』といえる、きわどいものだ。中国の現政権は、あきらかに人類がこれまでの歴史で積み重ねてきた、どこに生まれようと人間であれば普遍的に持っているはずの権利を踏みにじって、人類史そのものを何世紀か押し戻そうとするような政治を続けている。
その象徴が、中国独特の戸籍制度だ。この制度については、農村から都市への人口流入を防ぐ制度だと思いこんでいる人が多いようだ。だが、まったく違う。中国の全国民の身分を、生まれによって固定化させる制度なのだ。こんな制度がいつまでも続いていること自体が、中国がいかに横暴で身勝手な権力者によって支配されているかを示している。
ここまで歪んだ政治制度は、どんなに強固に構築されているようでも、どこかでほころびが生じたら、あっという間に崩壊するだろう。そして、この政権崩壊は、中国の労働者、農民にとって画期的な境遇の改善につながるはずだ。」──「おわりに」より