ケインズ主義2.0
なぜ、大停滞から抜け出せないのか
世界の経済学者たちは何を議論してきたのか
1930年代の大恐慌から今日に至るまで、経済不況をめぐる論戦は、つねに「ケインズ主義対反ケインズ主義」の図式で争われてきた。21世紀の世界経済危機においても、反ケインズ主義陣営は「不況下の財政引き締め」を主張し、それに対してケインズ主義陣営は「超拡張的な金融政策とマイルドな財政政策のポリシー・ミックス」を主張してきた。日本の「アベノミクス」も後者の陣営に位置づけられる。本書は、大恐慌以来80年の経済論戦を展望し、世界の経済学者たちは何を議論してきたのか、世界経済はどこへ向かうのかを明らかにする。アベノミクスによって注目を集める「リフレ派」。野口旭教授はその代表的な論客の一人であり、本書は、野口教授の知的格闘を集大成した待望の書き下ろしである。
「この財政政策積極主義と金融政策消極主義によって特徴づけられる初期のケインズ主義は、現代の地点からは『ケインズ主義(I)』と呼ぶことが可能であろう。それに対して、今回の世界経済危機を経て浮かび上がってきた新しいケインズ主義は、いわば『ケインズ主義(II)』とでも名づけられるべきものである。本書の副題にあるように、これを『ケインズ主義2.0』といってもよいだろう。その本質は、赤字財政主義と金融政策積極主義の統合である。」──「終章」より
推薦の言葉──イェール大学名誉教授 浜田宏一
「今日の世界を眺めると、アメリカ経済は絶好調のようだが、FRBの金融緩和政策の「出口」を心配する人たちもいる。日本ではアベノミクスは大成功だったが、消費税増税の副作用が現れている。ユーロ圏はようやくアベノミクスに学んでデフレ退治に乗り出そうとしているが、ドイツはかつての日銀のように金融緩和政策に抵抗していた。中国の将来にもたくさんの不安定要因がある。このような時代にあっては、一人でも多くの国民が、経済メカニズムとその思想的背景を正しく理解することが重要である。
私の共同研究者である野口旭教授は、国際経済学の専門家であると同時に、経済思想と現今の経済政策との関連の研究では、日本の第一人者である。アベノミクスの神髄を理解している数少ない経済学者の一人でもある。
一人でも多くの読者が本書を熟読し、古いマルクス主義的思考の影響や、官庁の言いたいことを代弁している経済学者・エコノミストの影響を脱して、自分たちの生活を改善するのに役立つ経済学に目覚めてほしい。」