日本に残された大逆転のチャンス
「一帯一路」とAIIBで覇権をめざす中国。米国が主導するTPP。米中の狭間で日本は生き残れるのか。内幕情報を交えつつ論じる。
世界経済の成長センターであるアジア太平洋で、ルール形成の主導権をめぐる争いが熾烈になってきた。中国はユーラシアをまるごと勢力圏に置こうとする大戦略、「一帯一路」を打ち出した。これは、中国が経済的な対中包囲網とみなすTPPへの対抗策だ。海洋国家としてフラットな自由貿易圏の形成を求める米国に対し、大陸国家としての中国は二国間関係の束をつくることで自国に有利な秩序づくりを追求している。
その象徴であるAIIBは、当初想定された以上の参加国を集め、2015年12月に船出する。
米中は単純な対立構図にはなく、パワーバランスによりその関係は変転を続けている。中国は一時期までTPP参加を模索し、米国も将来的には中国を包含することを目指す。また、欧州諸国をメンバーに加えたAIIBは日米の参加をも働きかけている。それぞれ先進国と新興国を代表する米中は対立しつつ、協調を模索する関係にある。
この混沌とする情勢下で、日本が米中の動きに十分キャッチアップできているとは言いがたい。中国経済の構造問題、アジア太平洋の国際関係を深掘りし、AIIBをめぐる交渉の内幕情報を交えつつ日米中関係の明日を論じる。
【主な内容】
●中国はTPPを対中包囲網と認識、現代のシルクロードをつくる「一帯一路」構想でユーラシア支配狙う。
●AIIB(アジアインフラ投資銀行)、シルクロード基金などが「一帯一路」の資金源。
●英国のAIIB参加を日本は事前察知していたが、情報を生かせず。
●日米主導のアジア開発銀行(ADB)が中国に奪われる!?
●いずれにせよ日本はAIIBに何らかのかたちで関与せざるをえなくなる。
●日本がAIIBに参加すれば中国は拒否権失う。
●「一帯一路」大開発で中国マネーが世界にあふれ出す。
●インドネシア高速鉄道は序の口。日本企業は中国になぜ負ける。
●中国空母保有の狙いは「一帯一路」戦略のサポート。
●日米の隠された狙いはTPPをテコにした中国市場の開放。