自由主義の危機

国際秩序と日本

船橋 洋一編著/G・ジョン・アイケンベリー編著
2020年8月7日 発売
定価 3,300円(税込)
ISBN:9784492444580 / サイズ:A5/並/430

 過去70年間、日本はアメリカ主導の自由で開かれた国際秩序から、最も利益を得てきた国の一つである。中国も1970年代以降、この秩序の最大の受益国の一つに加わり、数億人の市民を貧困から救い出すことができた。
 アジア太平洋地域の発展を支えた、このような自由で開かれた国際秩序とは、アメリカが保証するハードパワーを背景に、開かれた形で国家間の関係を治める一連のルール、規範、そして制度をいう。それは安全保障秩序、経済秩序、人権秩序という三つの柱から構成される。ところがアメリカのトランプ政権はこの秩序を自ら破壊しつつあり、それは国際秩序をめぐって日本が抱える根本的なジレンマを露呈させることになった。
 本書は、安倍政権下の政策を分析・評価し、政治的・社会経済的な制約を考慮しつつ、アジア太平洋地域における自由で開かれた国際秩序を守り、 それを改革するために日本はどうすべきかを提案する。

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概要

アメリカの覇権が後退する中、アジア太平洋の「自由で開かれた国際秩序」を守るために日本は何をすべきか。鋭い筆致で問う。

目次

自由主義の危機〈主要目次〉

序章
日本と自由で開かれた国際秩序
船橋洋一、G・ジョン・アイケンベリー

第Ⅰ部 外交政策

第1章
積極的な安定力:アジア太平洋安全保障秩序における日本の役割
アダム・P・リッフ

第2章
追随からの脱却:自由貿易秩序の先導者
ミレヤ・ソリス

第3章
改善主義的な現状維持国:国際機関へのアプローチ
フィリップ・リプシー

第4章
普遍性から多元化へ:日本外交における価値
市原麻衣子

第5章
核ガバナンス:「同盟のための原子力」
秋山信将

第Ⅱ部 国政

第6章
平等主義的な分配政策と制限的な移民政策:日本モデルの発展と課題
塩崎彰久

第7章
日本型ポピュリズム:フワッとした民意、突風と熱狂
ヒジノ ケン・ビクター・レオナード

第8章
歴史問題:不完全な自由主義
トーマス・バーガー

第9章
憲法:柔軟さがもたらす強みと弱み
ケネス・盛・マッケルウェイン

第10章
静かな国民:
ネット時代における日本のジャーナリズムの行方
林香里

第Ⅲ部 日本国民

第11章
独自調査:日本の国際秩序観
アダム・P・リッフ、ケネス・盛・マッケルウェイン

 

著者プロフィール

船橋 洋一  【編著】
ふなばし よういち

東京を拠点とするシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(旧・日本再建イニシアティブ)」の共同設立者兼理事長。元朝日新聞社主筆(2007~2010年)であり、多くの著作で数々の受賞歴を持つ日本人ジャーナリスト。アジア太平洋地域の外交、日米同盟、北東アジアの地政学・地経学、歴史問題について幅広く執筆。朝日新聞北京特派員(1980~1981年)、ワシントン特派員(1984~1987年)、アメリカ総局長(1993~1997年)を歴任。著書として『21世紀 地政学入門』(文春新書、2016年)、『シンクタンクとは何か』(中公新書、2019年)、『地経学とは何か』(文春新書、2020年)など多数。

G・ジョン・アイケンベリー  【編著】
G・じょん・あいけんべりー

プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共政策大学院教授。自由で開かれた国際秩序に関する世界有数の専門家。Liberal Leviathan: The Origins, Crisis, and Transformation of the American World Order(Princeton University Press, 2011)をはじめとした7冊の著書がある。著書After Victory : Institutions, Strategic Restraint, and the Rebuilding of Order after Major Wars(Princeton University Press, 2001、鈴木康雄訳『アフター・ヴィクトリー 戦後構築の論理と行動』NTT出版、2004年)は、アメリカ政治学会が世界史および国際政治の最優秀著作を選出する、Schroeder-Jervis賞(アメリカ政治学会世界史国際政治部門)を受賞(2002年)。