新しい階級闘争

大都市エリートから民主主義を守る

マイケル・リンド著/中野 剛志解説/施 光恒監訳/寺下 滝郎訳
2022年11月18日 発売
定価 2,200円(税込)
ISBN:9784492444719 / サイズ:四六/並/294

フィナンシャル・タイムズ、タイムズなど欧米メディアで絶賛!イブニング・スタンダード紙のブックオブザイヤー受賞。「資本家」対「労働者」から「大都市エリート」対「土着の国民」へ。左右ではなく「上下」対立の時代を読み解くバイブル!ポピュリズムは病原ではなく症状だ。民主主義を滅ぼす病原は新自由主義にある
【欧米メディア&識者が絶賛】
◎これまでで最も優れたポピュリズム分析の書(「イブニング・スタンダード」紙)
◎力作だ。欧米の政治が簡潔ながらも繊細に分析されている。ポピュリズムは、大学を出ていない労働者たちから経済的交渉力、政治的影響力、文化的威厳を奪ってきたテクノクラート新自由主義に対する反動だとリンドは主張する(デイヴィッド・グッドハート、『The Road to Somewhere』著者)
【中野剛志氏】
ポピュリズムの原因は、新自由主義的な政策によって労働者階級を抑圧し、政治・経済・文化のいずれの領域においても労働者階級を疎外してきたエスタブリッシュメントの側にある。ポピュリズムは確かに健全ではないが、それは、エスタブリッシュメントの新自由主義的な支配という疾患に現れた症状に過ぎないのである。私は、リンドの思想に全面的に賛成である(巻頭解説より)
【施光恒氏】
本書は、戦後実現した「民主的多元主義」の安定した政治が、1970年代に始まった新自由主義に基づく「上からの革命」の影響を受けた結果、機能不全に陥り、米国の国民統合が現在までにいかに脅かされ、分断が進んだか、またどのように分断の解消を図っていくべきかについて考察したものである。民主的多元主義の再生を可能ならしめるために、現行の新自由主義に基づくグローバル化推進路線の転換が必要だと本書は論じる。新自由主義的な改革に明け暮れてきた欧米諸国や日本に新しい視点を与え、自由民主主義の意味や条件を考えさせる貴重な一冊だ(監訳者解説より)
【概要】
グローバル化の問題点は「新しい階級闘争」を生み出した。新自由主義改革のもたらした経済格差の拡大、政治的な国民の分断、ポリティカル・コレクトネスやキャンセルカルチャーの暴走である。各国でグローバル企業や投資家(オーバークラス)と庶民層の間で政治的影響力の差が生じてしまったことがその要因だ。著者は現代の「新しい階級闘争」の解決を考えるために、マルクスが問題にしたような資本家対労働者の「古い階級闘争」がどのように解決・穏健化に向かったかを探り、戦争が中間団体の調整の政治「民主的多元主義」を各国が編み出し、階級を越える国民の妥協と結束をもたらしたと指摘。戦後の欧米の福祉国家はすべて戦争の名残だ。しかし1970年代頃から「オーバークラス」が「上からの反革命」を起こして、庶民を裏切るに至ったと分析する。「新しい階級闘争」の解決のためには、同様に中間団体の再生やその間の調整の政治の復権、「民主的多元主義」が必要だと説く。そのためにはグローバル化に一定の歯止めをかけるしかなく、無理ならば自由民主主義も滅びることになると論じる

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概要

資本家対労働者という「古い階級闘争」から、大都市エリート対地元民という「新しい階級闘争」への時代変遷を読み解くバイブル。

目次

【巻頭解説】「啓発されたリベラル・ナショナリズム」という思想(中野剛志)

イントロダクション 反乱か、革命か

第1章 新しい階級闘争

第2章 「ハブ」と「ハートランド」:新しい階級闘争の戦場 

第3章 世界大戦とニューディール

第4章 上からのネオリベラル革命 

第5章 ポピュリスト――下からの反革命

第6章  ロシアの操り人形とナチス:ポピュリスト有権者を悪者扱いする管理者エリートの手口
 
第7章  労働者のいない楽園:姑息な新自由主義的改革

第8章  拮抗力:新しい民主的多元主義に向けて 

第9章  民主的多元主義にとって安全な世界を

エピローグ 「新しい階級闘争」を終わらせる方法

【監訳者解説】新自由主義的改革に反省を迫り、民主的多元主義の再生を促す書(施光恒)

著者プロフィール

マイケル・リンド  【著】
まいける・りんど

テキサス大学オースティン校リンドン・B・ジョンソン公共政策大学院教授。ワシントンDCにあるシンクタンク「ニュー・アメリカ」の共同設立者でフェロー。ニューヨーカー誌、ハーパーズ・マガジン誌、ニュー・リパブリック誌の編集者、スタッフライターを歴任。ニューヨーク・タイムズ紙、フィナンシャル・タイムズ紙、ポリティコ、フォーリン・ポリシー誌、インターナショナル・エコノミー誌などに寄稿。ノンフィクション、フィクション、詩など、多くの著作がある。

中野 剛志  【解説】
なかの たけし

評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。 2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』 (集英社新書)、『国力論』(以文社)、『富国と強兵ー地政経済学序説』(東洋経済新報社)、『変異する資本主義』(ダイヤモンド社)などがある。

施 光恒  【監訳】
せ てるひさ

政治学者、九州大学大学院比較社会文化研究院教授。1971年、福岡県生まれ。英国シェフィールド大学大学院政治学研究科哲学修士(M.Phil.)課程修了。優等修士号取得。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。著書に『リベラリズムの再生』(慶應義塾大学出版会)、『英語化は愚民化』(集英社新書)、『本当に日本人は流されやすいのか』(角川新書)、共編著に『ナショナリズムの政治学』(ナカニシヤ出版)などがある。


寺下 滝郎  【訳】
てらした たきろう

翻訳家。1965年広島県呉市生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業。東洋英和女学院大学大学院社会科学研究科修了。訳書にウォルター・ラッセル・ミード著『神と黄金―イギリス、アメリカはなぜ近現代世界を支配できたのか』(青灯社、上下巻)などがある。主に外交評論、人文・社会科学系の学術論文などの英日・日英訳。