奇跡の「競技者自治」はいかにして創られたのか?
大麻問題、野球賭博問題などの不祥事が相次いだ財団法人日本相撲協会であるが、経営体としての相撲協会は、財務的には安定した優良企業である。この協会の経営を担っているのは「年寄」で、彼らは学校教育を受けた年限は短く、組織経営についての教育を受ける機会もほとんどなかったが、相撲競技においては一定以上の実績を上げた「もと力士」である。
年寄たちによるマネジメントが、奇跡とも言える「競技者自治」に基づいた相撲協会の安定的な経営を実現したのである。この安定した経営を実現するために相撲協会が取り組んできた多くの改革や努力についてはあまり知られていない。
本書では、経営学の観点から日本相撲協会をまず相撲協会の財務分析を行うことによって、リスク回避型の事業モデルの本質に迫り、さらには、その組織、採用、人材育成などへの分析を行うことによって、安定したビジネスモデルについて明らかにする。また、改革の方向性への提言も行っている。経営体としての日本相撲協会を、経営学の視点から分析・研究した意欲作です。
第1部 競技者自治の奇跡 序 章 経営学の観点から見た大相撲 第1章 大相撲のトップマネジメント組織 第2章 財務の評価 第3章 財務から見た事業構造の変化 第4章 コスト構造の分析 第5章 年寄名跡の承継 第6章 新弟子の獲得 第7章 総合論議 第2部 改革の方向性 第8章 相撲協会を改革する目的参考 第9章 相撲部屋の未来 第10章 年寄 第11章 不祥事再発防止のために 第12章 安定と発展のために――力士の近未来像
武藤泰明
むとう・やすあき
早稲田大学教授/博士(スポーツ科学).専門はマネジメント.
東京大学大学院(修士)修了.三菱総合研究所主席研究員を経て現職.鉄道・運輸機構特別顧問,日本FP協会理事なども務める.
著書に『ファンド資本主義とは何か』『プロスポーツクラブのマネジメント』(以上,東洋経済新報社),『経営の基本』(日本経済新聞出版社),『未来予測の技法』(PHP研究所)ほか多数.