君は何のために働くのか?
常にチャンスはあります。
そのチャンスを逃している人が、
世の中にはたくさんいます。
いまあるチャンスを逃してしまうと、
年齢とは関係なく、
10年後には必ず10年前を懐かしみながら
後悔してしまうと思います。
だから、もう遅いと考えるよりは、
10年後に後悔しないように挑戦しながら
生きてみるのがよいのではないでしょうか。
──アン・チョルス
サムスンやLG、現代自動車といった大企業中心の韓国企業において、本書の著者であるアン・チョルス(安哲秀)氏のようなベンチャー企業の創業者は、日本の読者にとって非常に珍しい存在になるかもしれない。
アン氏は、いま韓国社会で最も注目される人物であり、「アン・チョルス・ブーム」として、社会現象にもなっている。
アン氏は、韓国の最高学府であるソウル大学、しかも医学部を卒業して医者になり、大学の教授にもなった。
コンピュータウイルス用ワクチンのベンチャー企業を設立して一国一城の主となり、韓国を代表する企業にまで成長させた。経営から退いた後に米国留学で学位を取得、帰国後も最高学府の教授などを務める──。残りは、政治家になって「大統領になること」だけとも言われている。
韓国も現在の日本と同じで、保守・革新の旧態依然とした対立構造が続くと同時に、景気もよくならず社会の両極化が進んでいる。特に20代の若者の就職難や正規労働者と非正規労働者の待遇格差といった問題が広がり、閉塞感が漂っている。だからこそ、まだ相対的に若く、社会的実績もあるアン氏への"大統領待望論"が力強く継続しているのだろう。
本書は、大学生に向けて直接語りかけるという形をとっているため、彼の本心が丁寧に語られている。その本心は、非常に純粋である一方、当たり前的なお題目にすぎないと感じられる読者もいるかもしれない。だが、その「当たり前」を忠実に実行して成果を上げることもまた、非常に難しい。ことをなすたびに基本的なことから問い直し、自分が最も合理的だと考える選択を行うアン氏の思考方式は、「当たり前」であることを愚直に繰り返し、同時に成果を上げてきた。その事実と実行力は、日本の読者、特に経営者にも参考になるのではないだろうか。
──訳者
はじめに 第1部 経営の原則 第2部 教授との対話 第3部 学生との対話 おわりに 訳者あとがき