起業中毒

起業家の「加速する脳」を突き動かす刺激的かつ破壊的な衝動

ニール・シーマン著/庭田 よう子訳
2025年6月25日 発売
定価 2,200円(税込)
ISBN:9784492503591 / サイズ:四六/並/274

”アニマルスピリット”を持ったイノベーターたちの「ドーパミン依存」。
イーロン・マスクの薬物依存報道の背景には何があるのか。
「スタートアップ」精神を駆り立てるものは何か。
起業家でもあるメンタルヘルス研究者が明かす「CEO病」から「起業家」を救う方法。

“起業家精神を駆り立てるものは何かに興味があるすべての人のための注目作!
著者もまた、北米のスタートアップ文化に根ざしたインターネット起業家のひとり。
そして、カナダで最も重要な脳科学者の一人の息子でもある。
起業家としての自身の経験と、「リスク」と「報酬」を処理する脳に関する父親の研究に基づきながら、世界で最も重要な”富の創造エンジン”、である「起業家マインド」は、実は一種のドーパミン中毒であると説明する。
問題を解決したり、飛躍的な進歩を遂げたりしたときに経験する高揚感は、非常に大きく刺激的であり、逆に彼ら彼女らが感じる落ち込みは、非常に苦しいものだ。
起業家が直面する精神的な課題を明確に描き出し、”アニマル・スピリット”を持ったイノベーターたちを周囲はどのようにサポートすべきなのか。
起業家の旺盛な活力を、より建設的で持続可能な方法へと導く方法を、幅広い視点から、思いやりと深い洞察力をもって、まさしく起業家的に提案する。

【本文より】
◎ドーパミンは、快楽や苦痛、リスクや報酬、人の行う選択に関して脳のなかで役割を果たすだけではなく、わたしたちのエネルギーや意志、目的にも影響を与える。
◎ドーパミンは起業家が目標達成に向かって突き進むことを可能にするが、同時に、阻止し制御すべき危険に起業家をさらしやすくする。
◎起業家の72%がメンタルヘルス上の懸念を訴え、49%が「長年1つまたは複数のメンタルヘルスの疾患」の既往歴があることがわかった。
◎起業家の32%が、2つかそれ以上のメンタルヘルスの疾患を経験したと答えており、18%が、長年3つかそれ以上のメンタルヘルスの疾患を経験したと答えた。
◎起業家の世界において誇大妄想の占める位置は大きい。(略)起業家の世界においてドーパミンがこれほど扱いにくいのは、それが人生で最も強い快感を味わった瞬間と結びついており、最高のパフォーマンスと充実した成果を動機づけるからだ。
◎ドーパミンの調節が大きく乱れると、物事について理性的に判断できなくなり、賢明に決断する力が失われがちになる。リスクと報酬の認識が歪む。通常なら喜びをもたらすものが、悲しみをもたらす。妄想や妄想性障害に苦しむこともある。(略)ドーパミンの調節異常は、健康に数々の不幸な結果をもたらす。それは、起業家コミュニティにおいて驚くほど頻繁に見られる。
◎起業家には大きく分けて2つのタイプがある。悪あがきをせず、失敗を課題ととらえるタイプと、失敗を個人的なことと受け止め、自分を責めて、ひどく落ち込んでしまうタイプだ。(略)わたしは後者のタイプについてとくに懸念している。"

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概要

イーロン・マスクの薬物依存報道の背景には何があるのか。起業家でもある脳科学研究者が明かす「CEO病」から「起業家」を守る方法

目次

第1章  起業家精神の危機

第2章  ドーパミンとは何か

第3章  ドーパミンはどのように作用するのか

第4章  ドーパミンの危険性

第5章  起業家とは何か

第6章  起業家を突き動かすドーパミン

第7章  起業家の苦悩

第8章  「快楽主義」「価値志向」2つのタイプの起業家

第9章  低俗な起業家の出現

第10章 「スマホを置きなさい」

第11章 変性意識状態

第12章 起業家と信仰

第13章 本当に大事なこと

第14章 起業家の健康を再考する

第15章 起業家の世界を再構築する

エピローグ 精算のとき

著者プロフィール

ニール・シーマン  【著】
にーる・しーまん

作家。トロント大学法学部卒業およびハーバード大学公衆衛生大学院修了後、ネット起業家・メンタルヘルスの研究者として活躍。現在、トロント大学Dalla Lana School of Public Healthで教鞭をとるほか、公衆衛生やメンタルヘルスに関わる多くの機関でシニアフェローを務める。『日経アジア』、『トロント・スター』などにも定期的に寄稿を行うほか、メンタルヘルスに関する研究を『ネイチャー』などの一流学術誌で発表。これまでにメンタルヘルス関連の書籍三冊を共同執筆した。2011年に出版された著書『XXL: Obesity and the Limits of Shame』では肥満に関する公衆衛生政策について考察し、ドナー賞(カナダで公共政策分野の優れた本に授与される賞)の最終選考に残るなど、高い評価を受けた。

庭田 よう子  【訳】
にわた ようこ

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。訳書に『民間諜報員(プライベート・スパイ)――世界を動かす“スパイ・ビジネス”の秘密』(晶文社)、『SS将校のアームチェア』『目に見えない傷』『映画『夜と霧』とホロコースト』(以上、みすず書房)、『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』『ナショナリズムの美徳』(以上、東洋経済新報社)、『疫病と人類知』(講談社)などがある。