製品開発拠点へと進化するアジア
――日本はどうすべきか?
今や世界の製品開発拠点となりつつある日本、韓国、中国の代表的企業における製品開発と人材マネジメントの関係を調査・分析し、日本企業の課題と展望を明らかにする一冊。
東アジア企業、中でも韓国企業、中国企業は、これまで日本の独擅場であった製品開発の分野でも日本企業に迫りつつある。今や「世界の工場」から「世界の開発拠点」へと進化を遂げつつある。
本書は、日中韓を代表するリーディング企業への聞き取り調査、ならびに3カ国374社へのアンケート調査を分析し、製品開発と人材マネジメントの関係をはじめて明らかにしたものである。3カ国の代表的な産業における開発製品の傾向と人材マネジメントを分析した結果浮き彫りになったのは、以下の姿である。
日本企業では、モジュラー型(くみあわせ)ではないインテグラル型(すりあわせ)寄りに特化した製品アーキテクチャ選択と長期志向の人材マネジメントの補完関係の強みと、そこに縛られる弱みが浮き彫りになった。韓国企業では、製品アーキテクチャの戦略的選択と柔軟な人材マネジメントとを組み合わせた強みと、人材不足による開発リーダーへの過重な負担という弱みが見られた。そして中国企業では、過度なモジュラー志向と短期的人材マネジメントの問題点と、そこから脱皮しようと苦闘する姿が浮き彫りになった。ますます熾烈化し進化する東アジアにおける競争市場のなかで、日本企業がどのようなポジションをめざし、そのためにどのような人材マネジメントを構築すべきであるか。実態分析と実証分析に基づき、日本企業の進路を明確に提言する。
序 章 世界の工場から世界の開発拠点へ :製品開発と人材マネジメントの日中韓比較 第1章 東アジアにおける生産ネットワークと製品開発の構図 第2章 製品開発と人材マネジメントの分析枠組み 第3章 携帯電話端末製造企業における製品開発と 人材マネジメントの日中韓比較 第4章 液晶テレビ製造企業における製品開発と 人材マネジメントの日中韓比較 第5章 業務用情報システム開発と人材マネジメントの日中韓比較 第6章 エンジニア人材マネジメントの日中韓比較 :企業聞き取り調査およびアンケート調査に基づく概観 第7章 製品アーキテクチャと人材マネジメント :企業アンケート調査に基づく日中韓比較 第8章 製品開発組織のリーダーシップと 製品アーキテクチャおよびインターフェイス設計規則選択 終 章 日本はどうすべきなのか
都留 康
つる つよし
一橋大学経済研究所教授。
一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(一橋大学)。
主要著書:『日本企業の人事改革:人事データによる成果主義の検証』(共著)東洋経済新報社、2005年;『選択と集中:日本の電機・情報関連企業における実態分析』(共編)有斐閣、2004年;『労使関係のノンユニオン化:ミクロ的・制度的分析』東洋経済新報社、2002年。 主要論文:「東アジアにおける製品開発と人材マネジメント:日本・韓国・中国企業の比較から考える」(共著)一橋大学東アジア政策研究プロジェクト編『東アジアの未来』第6章、東洋経済新報社、2012年;「主観的業績評価の理論と現実:大手自動車販売会社の人事・製品取引データと社員意識調査結果との接合データによる検証」(共著)『経済研究』62(4)、2011年;"The Union Wage Premium, Voice, and Nonunion Workers' Attitudes: Before and After Japan's Lost Decade," in Tor Eriksson, ed., Advances in the Economic Analysis of Participatory and Labor-Managed Firms, Vol.11, Bingley: Emerald Group Publishing,2010.
連絡先 tsuru@ier.hit-u.ac.jp
守島基博
もりしま もとひろ
一橋大学大学院商学研究科教授
イリノイ大学産業労使関係研究所、Ph.D.
主要著書:『人材の複雑方程式』日本経済新聞出版社、2010年;『人材マネジメント入門』日本経済新聞社、2004年;『21世紀の"戦略型"人事部』(編著)日本労働研究機構、2002年。
主要論文:"Non-Union Employee Representation in Japan," in Bruce E. Kaufman and Daphne G. Taras, eds., Non-Union Employee Representation: History, Contemporary Practice, and Policy, Armonk, NY:M. E. Sharpe,2000; 「成果主義の浸透が職場に与える影響」『日本労働研究雑誌』No. 474、1999年;"Strategic Diversification of Japanese HRM," in P. Wright, L. Dyer, J. Boudreau, and G. Milkovich, eds., Research in Personnel and Human Resource Management, Supplement4, 1999, Greenwich, CT: JAI Press.