戦略思考力を高めるために 最適なケースブック
戦略思考力を高める上でカギになるのは、現実とフレームワークの相互作用である。単に戦略論の教科書を読んだら戦略思考力が身につく、ということはない。
同様に、多様なケースに通じているということにも意義はあるが、ただ単に多数のケースを知っているだけでは、事情通にはなっても戦略思考力を高めることにはならない。
本書は、戦略思考力を身につけるための最初の手がかりを提供するものである。「戦略分析ケースブック」であって、「戦略ケースブック」ではない。単なる事例の寄せ集めにより、読者に事情通になってもらおうと企図しているのではない。
読者の皆様にお見せしようとしているのは、各章の結論そのものというよりも、分析的思考の跡であり、分析の作法である。
その意味で、本書は戦略思考力を高めるために、自学自習できる事例分析集である
解説されている分析手法は、5フォーセズ・モデル、マーケティングの4P's、経営資源分析、PPMなどMBAのスタンダードな戦略分析ツールである。扱われているケースは、ソーシャルゲーム業界、iOS対アンドロイド、パナソニックの全社戦略、LED照明業界、東芝液晶テレビ事業、シニアレジデンス業界、高級炊飯器、カミソリ市場など、8つの業界・企業の事例である。
序 章 戦略思考力をどう高めるのか --理論と現実の相互作用 第1章 企業間競争による市場構造の変化と顧客の「上方移動」 --高級炊飯器 第2章 市場地位別の企業行動分析 --ジレット/ブラウン・シック・貝印・パナソニック 第3章 驚異的成長を達成した業界の構造分析 --ソーシャルゲーム業界 第4章 スマートフォン市場 2大勢力の競争分析 --iOS対アンドロイド 第5章 垂直統合モデルと水平分業モデルの比較分析 --東芝液晶テレビ事業 第6章 パナソニックの全社戦略 --国内と海外を区分けしたキャッシュフロー・マネジメント 第7章 経営資源と見えざる資産をベースにした多角化戦略 ――シニアレジデンス業界の異業種参入 第8章 LED照明業界の構造 ――5フォーゼズ・モデルによる分析
沼上 幹
ぬまがみ つよし
一橋大学大学院商学研究科教授。1960年静岡県生まれ。1983年一橋大学社会学部卒業。1988年一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学。2000年一橋大学博士(商学)。