「ハイブリッド化」は何をもたらしたか
「失われた10年」と呼ばれる時代は、同時に「改革と実験の10年」でもあった。その結果、メインバンク・株式相互持ち合い・内部者からなる取締役会などによって特徴付けられた日本の企業統治は大きく変容した。
具体的には、伝統的な関係ベースの仕組みと、新たな市場ベースの仕組みとが結合したハイブリッドな企業統治が登場したと編者は考えている。
本書の課題は、90年代後半の銀行危機以降に生じた企業統治の進化を、可能な限り包括的に解明する点にある。そのうえで、リーマン・ショック後の企業統治の再設計に関する含意を引き出したいと考えている。
序 章 日本の企業統治の進化をいかにとらえるか 宮島英昭 第1)部 日本企業の外部ガバナンスはどう変化したか 第1章 「メイン寄せ」による規律付けと実証分析 小佐野広/堀敬一 第2章 株式所有構造の多様化とその帰結 宮島英昭/新田敬祐 第3章 日本のおける経営権市場の形成 胥 鵬 第2)部 内部ガバナンスと組織アーキテクチャ 第4章 日本企業による社外取締役の導入の決定要因とその効果 齋藤卓爾 第5章 何が成果主義賃金制度の導入を決めるか 齋藤隆志/菊谷達弥/野田知彦 第6章 多角化・グローバル化・グループ化の進展と事業組織のガバナンス 青木英孝/宮島英昭 第7章 親子上場の経済分析 宮島英昭/新田敬祐/宍戸善一 第3)部 企業統治の変化と企業行動への影響 第8章 R&D投資と資金調達・所有構造 蟻川靖浩/河西卓弥/宮島英昭 第9章 日本の大企業の資金調達 広田真一 第10章 配当政策と雇用調整 久保克行
宮島英昭 【編著者】
みやじま・ひであき
早稲田大学商学学術院教授、早稲田大学高等研究所所長、経済産業研究所ファカルティフェロー。1978年立教大学経済学部卒業、85年東京大学大学院経済学研究科単位取得修了。博士(商学)早稲田大学。東京大学社会科学研究所助手、ハーバード大学客員研究員等を経て現職。
主な著書:
『産業政策と企業統治の経済史』(有斐閣、2004年)
『日本のM&A』(編著、東洋経済新報社、2007年)
『企業統治分析のフロンティア』(編著、日本評論社、2008年)
『現代日本経済(第3版)』(共著、有斐閣、2011年)
Corporate Governance in Japan: Institutional Change and Organizational Diversity(co-edited, Oxford University Press, 2007)