EQ こころの鍛え方

高山 直著
2003年12月19日 発売
定価 1,760円(税込)
ISBN:9784492554999 / サイズ:サイズ:四六判/ページ数:240


【内容紹介】


 

ビジネスで成功するにはIQ(知能指数)だけでは足りない。対人関係の上手さや精神の安定度を測る指標として、フォーチュン500社の8割、日本の1200以上の企業・団体などで導入されている「こころの知能指数EQ」。日本におけるEQ理論とコンサルテーションの第一人者が、自己チェックから身近な訓練でできるEQ能力の自己チェックから向上方法をわかりやすく解説する。ロングセラーを続けるEQ入門書の決定版。



●はじめに


 

   「日本の雇用文化を変え、学歴差別や学校差別のない社会にしたい」

 「やる気や情熱、そして日本で大切にされてきた志など、個人の内面的な強さやたくましさが認められる社会にしたい」

 「明確な目標をもち、達成に向けて一生懸命努力している個人が学歴や学校で差別されない社会にしたい」



私は社会人になって、管理職となり、経営陣の一員として、採用や選抜、昇格の場面で見てきた現実に常々疑問をもっていました。人の能力や可能性は無限であり、学校名や学歴で差別されることなく、人は公平公正に評価されないのはなぜだろう。そんななか、出会ったのが、"Emotional Intelligence"という一本の論文でした。EQ理論の提唱者のピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士が、初めてEQを世に問うた論文です。



 内容を目にしたとき、わたしたちは強い衝撃を受けました。

  「ビジネスで成功するためにはIQだけでなく、EQが必要である」

「リーダーとして成功する人の多くは高いEQ発揮能力を備えている」

「EQはIQと異なり遺伝的要素が少なく、学習や訓練によって伸ばすことのできる能力である」



   そこには、わたしたちが長い間感じ続けてきた疑問に対する一つの明確な回答が示されていたからです。

 わたしは求人情報誌会社の勤務を含め、十数年にわたって人材ビジネスに携わってきました。その間、常に頭にあったのが「いい人材=いい大学」という人材観に対する疑問でした。一言でいえば、学校差別とでもいうべき採用姿勢です。当時企業が「いい人材が欲しい」という場合、ほとんどが「有名大学卒が欲しい」ということと同義語でした。「この仕事がやりたい」と意欲を燃やし、目標に向けて努力する十分な能力がある人材でも、出身校によっては門戸すら閉ざされているケースが少なくありませんでした。



 本当にこれでいいのだろうか。企業の将来を決める人材採用にIQという一つの偏った尺度だけでいいのだろうか。もっと広く、その人の持っている「人間的魅力」や「人間力」ともいうべき総合的な能力を見てあげることはできないのだろうか。そうすることができれば、採用する側にとっても採用される側にとっても間違いなく幸せな結果になるのでは……。



 この疑問はわたしの中で次第に膨らんでいました。そんなとき出会ったのが冒頭の論文でした。「IQだけではなく、EQが必要」──この一節に触れたとき、わたしは直感的に「これこそが探していたものだ」という思いにとらわれました。



 わたしたちはお互いにEQに大きな可能性を感じ取っていました。ただ、"Emotional Intelligence"はEQを理論的・実証的に論述したものですが、EQそのものを測定する方法については触れられていませんでした。



 EQをIQと並ぶ指標とするためには、EQそのものを測定する方法を確立する必要があると考え、わたしたちは心理学を専攻されている東京学芸大学の相川充教授のご協力のもと、EQ理論をベースにした検査システムの開発に着手しました。その結果、完成したのがEQI(Emotional Intelligence Quotient Inventory)です。



 一九九六年、この「EQI」を携え、EQ理論の本家本元であるサロベイ、メイヤー両博士に理論との整合性の認証をしてもらうために渡米しました。遠来の訪問者に対し、両博士は「EQを大切にしているはずの日本がEQを必要としているとは非常に興味があります」と親近感をもって迎えられました。そして「EQI」についても真摯な検討が加えられることとなりました。これをきっかけに、日本で初めてEQ事業がスタートしたのでした。



 以後、サロベイ、メイヤー両博士、および現在では世界におけるEQ活用の第一人者デビッド・カルーソ博士の三氏に研究開発顧問として参画いただくことになり、理論的助言や商品開発などさまざまな場面でご協力をいただいています。



 最近ではEQに関する本も多く、「EQ」という言葉も広く浸透しつつあります。しかし、EQとは具体的にどういうもので、どんなビジネスシーンで活用できるのか。あるいは「EQは伸ばせる」といっても、具体的にどうすればよいのかについては、まだ広く知られているとはいえないようです。



 本書はその視点から「EQとはどのようなものか」「EQを伸ばすにはどうしたらよいか」を基本に沿ってできるだけわかりやすく解説したものです。



 わたしが本書の執筆に際してイメージしたのは野球の「千本ノック」です。一口にノックといってもいろいろなかたちがあります。ゴロやフライ、強いボールやゆるいボール、左右や前後のボール……。野球少年からプロ選手まで、練習を重ねることでショートバウンドの処理やバックハンドの上手な使い方を覚えていくのです。



 EQを伸ばす方法も似ています。日常生活のさまざまな行動を変えていく練習を重ねることで、EQは確実に進歩していきます。本書には、そのためのさまざまなかたちのノックが示されています。なかには強烈なライナーもあれば、変則的にバウンドするボールもあります。本書をお読みいただいた皆さんが、これらの「千本ノック」を通して高いEQ能力を発揮され、ビジネスシーンだけでなく日常生活全般において生き生きとした毎日を送ることができれば、わたしにとってこのうえない喜びです。



 本書は、EQ理論の提唱者であるエール大学のサロベイ博士とニューハンプシャー大学のメイヤー博士、そしてワークライフ・ストラテジー社代表のカルーソ博士の助言なくしては生まれることはありませんでした。また、執筆にあたっては創業時より研究開発のご指導をいただいている東京学芸大学の相川充教授に多大なご協力をいただきました。



皆様にこころより感謝申し上げます。



高山 直 


商品を購入する

概要

対人関係の上手さや精神の安定度を測るEQは、近年ビジネスの世界で注目されている。本書は、身近な訓練でできるEQ能力の向上法を平易に解説。

目次


第1章 「感情」の大切さを知る
       :私たちの行動は「感情」に支配されている
第2章 もっと「感情」に強くなろう
       : EQを構成する4つの能力
第3章 あなたのEQを測定してみよう
       : EQ自己チェック
第4章 EQ開発トレーニング
       (1)自分の感情を知る
第5章 EQ開発トレーニング
       (2)相手や周囲の感情を知る
第6章 EQ開発トレーニング
       (3)いますぐできる
応用実践編 日常生活の行動を変えることで、こころを鍛える

著者プロフィール

高山 直
たかやま・なお

EQグローバルアライアンス代表。
1957年広島県生まれ。1997年3月に株式会社イー・キュー・ジャパンを設立。エール大学のピーター・サロベイ博士、ニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士との共同開発で「EQ理論」に基づいた「個人の自立と成長を支援する」プログラムを開発。2010年7月にEQグローバルアライアンスを設立し代表に就任。

著書に『EQこころの距離の近づけ方』(東洋経済新報社)、『EQ入門』(日経文庫)、『EQ相手のこころに届く言葉』(日本実業出版社)などがある。