「訳者あとがき」より
●本書について
本書は、Kapferer, Jean-Noel, and Vincent Bastien: The Luxury Strategy - Break the Rules of Marketing to Build Luxury Brands -, Kogan Page, London, 2009の全訳である。ただし、第10章、第12章、第15章および第16章については、日本語訳に際しての原著者による加筆修正を反映させている。特に第16章は全面的に加筆修正されて、喫緊の課題である環境対応の問題が拡充して論じられている。なお、原題を直訳すると『ラグジュアリー戦略-マーケティングの規則を破りラグジュアリーブランドを構築する-』であるが、原著者と相談して『ラグジュアリー戦略-真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか-』と副題を一部変更している。
英語版は、さらにフランス語版Bastien, V. et J-N Kapferer: Luxe Oblige, Eyrolles, Paris, 2008に拠っている。書名はnoblesse oblige(位高ければ徳高きを要す)をもじっていて、さしずめ『ラグジュアリーならば徳高きを要す』であったが、英語版に際して著者順が入れ替わるとともに書名も内容も変更されていて、フランス語版の単なる英訳ではない。本書も上のように英語版の単なる和訳ではないので、この日本語版が最新版ということになる。
●原著者について
二人の原著者は、欧州のトップ・ビジネススクールである仏HECの教授である。カプフェレ教授は、"The New Strategic Brand Management"や"Reinventing the Brand"(邦訳『ブランドマーケティングの再創造』で知られるブランドマネジメントの権威で、アーカー(Aarker, D)、ケラー(Keller, K.L.)とともに「ブランド三聖人」と称される。また、バスティアン教授は、ルイ・ヴィトン マルティエ(Louis Vuitton Martier)取締役、イヴ・サンローラン パルファン(Yves Saint Laurent Parfums)最高経営責任者等を歴任しており、ラグジュアリー戦略における理論と実務の最強タッグである。
●本書の主な特徴
1)ラグジュアリーの本質、特に、ラグジュアリーの起源や社会的役割、プレミアム戦略やファッション戦略との違い、マーケティングの逆張りの法則、今日のラグジュアリーのさまざまな様相がわかる(第1部)。
2)ラグジュアリー戦略の具体的な内容、特に、顧客戦略、ブランドエクイティ戦略、ブランド伸張戦略、製品戦略、価格戦略、流通チャネル戦略、コミュニケーション戦略、財務・人的資源戦略がわかる(第2部)。
3)ラグジュアリー戦略の大局的な展望、特に、ラグジュアリーのビジネスモデル、ラグジュアリーへの参入・退出戦略、ラグジュアリー業界以外への適用、環境問題への対応戦略の具体的な内容がわかる(第3部)。
4)ラグジュアリー戦略とラグジュアリーブランドの関係、特に、ラグジュアリーブランドであるがファッション戦略を採るディオール(Dior)、ラグジュアリー戦略を採るファッションブランドのラコステ(Lacoste)、両者が一貫しているシャネル(Chanel)という関係が理解できる。
5)ラグジュアリー戦略の形成・発展に貢献した日本市場の特徴がわかる。
6)欧州市場や、中国・インドなどの新興国市場の動向と留意点がわかる。
7)ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のエピ(Epi)ライン導入、モンブラン(Mont Blanc)の時計への伸張などの具体的事情が生々しくわかる。
●本書の主な対象読者
1)いわゆるラグジュアリーブランド業界のみならず、富裕層を標的としている業界すべて。例えばホテル・レストラン・旅行業界、百貨店業界、金融・証券業界、イベント業界、不動産・デベロッパー業界等。
2)企業経営者、特にブランド価値や顧客価値を高めたい企業経営者およびマネジャー、特にブランドマネジャー、あるいはコンサルタント
3)業界4位以下の企業、ベンチャー企業・中小企業の経営者
4)欧州市場や、中国・インドなどの新興国市場を狙う企業の経営者
5)経営戦略やマーケティング戦略・ブランド戦略・デザイン戦略の実務担当者、あるいはこれらを学ぶMBA、MOT(技術経営)社会人学生
序 ラグジュアリーであるべきか、あらざるべきか 第1部 ラグジュアリーの基礎に立ち返ろう 第1章 はじめにラグジュアリーありきだった 第2章 混同の終焉: プレミアムはラグジュアリーではない 第3章 マーケティングの逆張りの法則 第4章 今日のラグジュアリーが持つ様相 第2部 ラグジュアリーブランドは 特有のマネジメントを必要とする 第5章 顧客のラグジュアリーに相対する態度 第6章 ブランドエクイティを成長させる 第7章 ラグジュアリーブランドの伸張 第8章 製品にラグジュアリーの資格を与えること 第9章 ラグジュアリーを価格付けること 第10章 流通チャネルとインターネットのジレンマ 第11章 ラグジュアリーをコミュニケーションすること 第12章 ラグジュアリー会社の財務および 人事マネジメント 第3部 戦略的展望 第13章 ラグジュアリーのビジネスモデル 第14章 ラグジュアリーへ参入すること、 および離脱すること 第15章 ラグジュアリーから学ぶこと 第16章 結び:ラグジュアリーと持続的発展