はしがき
2006(平成18)年の5月に施行された会社法も5年が経過し、金融商品取引法も施行され、内部統制制度(J─SOX)も制度化された。持株会社経営にとってこの内部統制の制度化は、グループ経営の観点から特に重要な意味をもつことになろう。さらには、税制面においても2010年度(平成22年)税制改正において、連結納税制度の改善とともに、「グループ法人税制」の創設が行われた。また、自己株式取得に係るみなし配当課税と譲渡所得課税の見直し、清算所得課税の廃止などの資本取引に係る税制の見直しもなされた。
今回の改訂にあたっては、国際税務分野を含め、「税務編」を全面的に見直し、2011年(平成23年)12月2日施行の税制改正も加えた。
このように、持株会社経営に影響を与える法規制等が、第5版発行以降大きく変化した。本書は、持株会社経営の実務書として、常に最新情報を読者にお届けすることを使命としている。そのため、この第6版も旧版同様、持株会社経営の実務書として、読者の皆様のお役に立つことができたなら、筆者たちの望外の幸せである。
本書は次のような特徴をもっている。
1 持株会社経営の実務指針書である
当初持株会社経営の実務をテーマにしたものは皆無といっても過言ではない状況であったが、その後も実務をテーマにした類著はあまり見られない。その意味においても本書発刊の意義は大きいと思っている。 そこで、今回の改訂においても変わらず実務をテーマとし、内容をさらに充実したものとした。
2 持株会社の実務としての経営・法務・税務・会計の各分野からの検討を加えた
実務に焦点をあてているため、可能な限り最新の法律改正を織り込んである。ただし、法律の改正は今後もめまぐるしく行われることになろう。この点はできるだけ最新情報をお届けすべく法改正に合わせ今後も改訂していくことでお応えしたい。
3 中堅・中小企業も十分に念頭において書かれている
持株会社の経営は制度導入当初は、大会社や金融機関のものと思われている節が見受けられたが、最近では非公開の中堅・中小企業も持株会社制を採用する会社が増え、身近なものとなってきた。
4 本書は、経営者から、社長室・経営企画室・法務・財務・経理を担当する人まで、幅広い読者層を意識して書かれている
初版以来これら多くの方々に読まれたことは著者たちのこの上ない喜びとするところである。
最後に、この度の改訂にあたっては、税理士法人プライスウォーターハウスクーパースの宮口徹氏、望月文太氏に援助いただいたことを、心から厚くお礼申し上げる。
2012(平成24)年3月
發知 敏雄
箱田 順哉
大谷 隼夫
第1部 経営編 第1章 持株会社の経営戦略 第2章 持株会社の組織と管理 第3章 持株会社経営成功の秘訣 第2部 法務編 第4章 会社法と持株会社の創設 第5章 会社法と持株会社の運営 第6章 持株会社と各種の法規制 第3部 税務編 第7章 持株会社経営の組織再編と税務 第8章 持株会社とグループ法人税制 第9章 持株会社と連結納税制度 第10章 持株会社の運営と税務 第11章 海外子会社の税務 第12章 子会社への事業支援と撤退にともなう税務
發知 敏雄
ほっち としお
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース顧問、税理士・公認会計士。
国税調査官として、東京国税局管内の税務署にて法人税調査に従事。その間に公認会計士第三次試験に合格し、公認会計士となる。青山監査法人(プライスウォーターハウス)で会計監査業務に従事した後、野村證券MAS室において事業承継問題等の税務相談業務に従事し、現在は専ら税務コンサルティング業務に従事。また、大手証券会社ほか金融機関において、講演活動に豊富な経験を有する。元公認会計士試験委員(平成18年?20年、租税法担当)。日本公認会計士協会(東京会)元税務委員会委員。同協会学術賞審査委員。
主な著書:『会社節税マニュアル』(共著、ぎょうせい)、『会社税務重要問題精選500』(編集委員、ぎょうせい)、『そこが知りたい! 税務調査の現場』、『そこが知りたい! 事業承継の現場』(以上、ぎょうせい)、「わが国における国際課税制度の基礎的な研究」、「わが国における企業買収・合併の税務」(以上、日本公認会計士協会答申書)、『グループ会社の経営実務』(編著、第一法規出版)、『事業承継・相続対策の法律と税務』(分担執筆、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース編、税務研究会出版局)。
箱田順哉
はこだ じゅんや
あらた監査法人代表社員、プライスウォーターハウスクーパース パートナー、公認会計士。
慶應義塾大学大学院特別招聘教授(内部監査論)、日本内部統制研究学会理事。
内部監査・内部統制、コーポレートガバナンス、経営管理等のコンサルティング業務及び内部監査アウトソーシング業務に従事。
主な著書:『テキストブック内部監査』(東洋経済新報社)、『内部監査実践ガイド』(編著、東洋経済新報社)、『企業グループの内部監査』(同文舘出版)、『コーポレート・ガバナンスと経営監査』、『新しい経営監査』、『国際会計基準ハンドブック』、『アメリカの会計原則』(以上、共著、東洋経済新報社)。
大谷 隼夫
おおたに はやお
大谷法律事務所所長、弁護士。
商事、民事等に関する法律相談、訴訟等を主たる業務としている。 12年間検事を務めた後、1985年から弁護士。東京弁護士会会社法部会員。東京弁護士会常議員、綱紀委員、関東弁護士連合会常務理事、日本弁護士連合会司法法制調査部商事経済部会員等を歴任。現在、東京弁護士会紛争解決センターあっせん人・仲裁人、同会裁判員制度部会員。
主な著書:『グループ会社の経営実務』(共編著、第一法規出版)、『会社・経営のリーガルナビQ&A』(共編著、民事法研究会)