ロジック“だけ”では「大きな答え」は出せない!
「キレ」の思考=具象×ロジック×客観 鋭く考える
「コク」の思考=抽象×イメージ×主観 豊かに考える
「大きな答え」は「キレ」と「コク」を往復してこそ生まれる。
分析的に論理的に、具象的で直線的に、明瞭さを追求しながら考えることは重要である。
と同時に、綜合的に直観的に、抽象的で非直線的に、ある種の曖昧さを友としながら考えることも重要である。
本書では、前者を「キレ」の思考、後者を「コク」の思考と名付ける。そして昨今のビジネス現場において、「キレ」の思考への偏重が進む一方、「コク」の思考への軽視があることや、両者間の力強い往復運動が起こりづらくなっていることに視線を向ける。
本書は、特に「コク」の思考を強化する技能本でもある。「コク」の思考を訓練する狙いは、
・曖昧のなかから本質をつかんで形に落とす、という思考の流れを体験する
・コンセプチュアル(概念的)な思考に慣れる
・仕組みやモデルを考える力を培う
・図を通したコミュニケーション力・プレゼンテーション力を強化する
・そして、最終的に「自分は何者であるか/ありたいか」という目線から、自らの職業・担当事業に新しい息吹を送り込む
といったことになるだろうか。
「コク」の思考を鍛えるワークショップとして、以下のような演習も用意しているので、取り組んでみてほしい。
演習:「私は何を売っているのか」で自己を定義する
演習:「仕事とは何か」をあなた独自のモデルで示しなさい
演習:「田の字」マトリックスの象限名を比喩化する
演習:ボックス・ティッシュ開発におけるA社とB社の“低価格競争”
演習:インドの製薬会社P社の安価なエイズ治療薬
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PART1 キレの思考・コクの思考 第1章 「思考球域〈Thought Sphere〉」 ~3次元で捉える「鋭く考える」と「豊かに考える」 「思考の三軸」がつくる球状空間 人には「思考の基地」がある コラム:「コク」の話 第2章 なぜいま「コク」の思考なのか ~独自で強い発想は「抽象×イメージ×主観」から生まれる 意志を宣言するアップルvs.性能説明をする日本メーカー アップルは「essence→form」・日本勢は「form→form」 洞察は着想と試作の往復運動によってなされる PART2 「コク」の思考を鍛えるワークショップ 第3章 曖昧なことを「定義化する」 ~物事の本質を探り言葉に落とす 「事業とは何か」を定義する 演習:「私は何を売っているのか」で自己を定義する 第4章 曖昧なことを「モデル化する」 ~物事の本質を構造にして表す モデル化=物事の仕組み・捉え方を単純化して表す 「on」=「~の上に」ではない 演習:「仕事とは何か」をあなた独自のモデルで示しなさい 第5章 曖昧なことを「比喩化する」 ~物事の本質を引き出し置換する 共通性を見出して括る……それが抽象作業 「レトリック」 ~春雨のなかの蓑と傘 「比喩の展開」 ~思考は「πの字プロセス」 演習1 ~「田の字」マトリックスの象限名を比喩化する 演習2 ~ギリシャ神話から担当事業への教訓を引き出す コラム:プラトン「洞窟の比喩」の概要 第6章 曖昧なことを「マンダラ化する」 ~概念を一幅の絵図に収める 総合演習 ~「リスクとは何か」について考え表現せよ 「コクの思考」の最終表現 ~目で考えさせる概念 マンダラ・エッセイ:「なめてかかって真剣にやる」 第7章 「モラルジレンマ」に立つ ~「自分は何者であるか」を明らかにする判断の岐路 五人を殺さないために一人を殺してよいか 「一般の人の公正さ」vs.「MBA保持者の公正さ」 演習1 ~ボックス・ティッシュ開発におけるA社とB社の“低価格競争” 演習2 ~インドの製薬会社P社の安価なエイズ治療薬
村山 昇
むらやま・のぼる
概念工作家、組織・人事コンサルタント、キャリア・ポートレートコンサルティング代表
企業の従業員・公務員を対象に、「プロフェッショナルシップ」(一個のプロとしての基盤意識)醸成研修、キャリア教育のプログラムを開発・実施している。
1986年慶應義塾大学経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。94~95年イリノイ工科大学大学院研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。
著書に『プロセスにこそ価値がある』(メディアファクトリー)、『個と組織を強くする部課長の対話力』『いい仕事ができる人の考え方』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』『“働く”をじっくりみつめなおすための18講義』『上司をマネジメント』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『ピカソのキャリア ゆでガエルのキャリア』(すばる舎)などがある。