はじめに
メディア&エンターテインメント業界は、近年の情報通信技術の進化によって、ビジネスそのものも大きく変貌を遂げようとしています。通信面においては、大容量の情報をより早くといったニーズに応え、ADSL、ケーブル、光ファイバー等といったブロードバンド対応がされてきたところです。受信端末としては、携帯電話、パソコンに加え、多機能携帯端末であるiPhoneやBlackBerry等といったスマートフォン、iPadやキンドル等といった電子書籍対応端末が利用されるようになり、その普及に伴って、多くのアプリケーションソフトが開発搭載され、受信端末さえあれば、容易にコンテンツ(映像、音楽、ゲーム、書籍等)を楽しむことができるようになりました。また、2009年からは、3D映画が上映されるようになり、日米の映画興行収入も増加傾向を続けています。
ビジネス面では、権利処理に係る時間のコストのハードルはあるものの、Web上でコンテンツを利用、閲覧することに対する課金ビジネスが成長してきました。また、オンラインゲームでは、ソフトとハードが一体となった環境で、ユーザーが利用するアイテムに課金するビジネスモデルが確立しました。出版業のように、電子書籍の登場により、ビジネスモデルを再構築することが求められている事業もあります。
一方、コンテンツビジネスに係る会計実務についてはどうでしょうか。この分野について、最初にQ&A形式で論点を整理したのは、2002年出版の『コンテンツビジネスの会計実務』(中央青山監査法人編、東洋経済新報社)ですが、新たなビジネスモデルに対してはともかく、8年余り経過した現在でも、日本の会計実務は、それ程大きく変わっていないのではないでしょうか。
しかしながら、「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」(平成21年6月30日企業会計審議会)によりIFRS適用の可能性が示され、その適用においては、従来の会計実務を見直すことが必要になってくるかもしれません。
本書は、メディア&エンターテインメント業界における、映画、ゲーム、放送、出版、共同制作、広告といったコンテンツをめぐる主要な事業について、日本の会計実務上の論点を整理するとともに、可能な限り、IFRSや米国基準の規定や適用事例を紹介して考察を行ったものであります。
いずれの分野のQ&Aも、実務経験豊富な第一線の公認会計士が英知を結集して執筆したものであります。本書で検討した会計処理の考え方が、経理実務担当者の良き参考書となることを願ってやみません。
2011年6月
新日本有限責任監査法人
理事長 加藤義孝
第1章 映画・映像ビジネス 第2章 ゲームビジネス 第3章 放送ビジネス 第4章 出版ビジネス 第5章 共同制作 第6章 広告ビジネス
新日本有限責任監査法人 【編著者】
新日本有限責任監査法人は、アーンスト・アンド・ヤングのメンバーファームである。全国に拠点を持ち、日本最大規模の人員を擁する監査法人業界のリーダー。品質を最優先に、監査および保証業務をはじめ、各種財務関連アドバイザリーサービスなどを提供している。
アーンスト・アンド・ヤングのグローバル・ネットワークを通じて、日本を取り巻く世界経済、社会における資本市場への信任を確保し、その機能を向上するため、可能性の実現を追求している。
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