ウォール街を支える効率的市場理論は、
いかに発展し、神話となり、限界を露呈したのか。
本書は、金融市場はどのように動いていると考えられるかという問題をめぐる、強力だが欠陥のある一連の理論の興隆と、一部の理論の凋落をつづった物語である。
その中でいちばん有名な理論である効率的市場仮説によれば、市場は情報を完璧に合理的に処理し、資本を効率的に配分する。また、ブラック = ショールズ・オプション価格評価モデルと資本資産評価モデル(CAPM)を信じているのであれば、市場のリスクは計測できて、管理できる。
インデックス・ファンド、現代ポートフォリオ理論と呼ばれる投資アプローチ、株主価値という企業の信条、デリバティブなどの1970年代以降のアメリカで広くみられた金融市場に対する自由放任主義が生まれる一端を、この仮説が担うこととなった。
しかし、2007年夏、合理的市場という理論体系の全体が音を立てて崩れた。それは不滅の真理ではなかったのである。合理的市場理論や株主価値理論は、複雑な世界を劇的なまでに極端に単純化している。そうすることが有益な場合もある。しかし、これらの理論は現実をありのままに記述したものではない。それを不滅の真理とするのは危険な考え方である。
本書で描かれる1世紀にわたる理論の興隆と凋落の歴史は、同時にそれはウォール街の発展の歴史であり、大恐慌から今日の金融危機に至る物語でもある。
第1章 大暴落の道化と現代ファイナンス理論の設計者 第2章 ランダムウォーク理論の萌芽 第3章 ポートフォリオ選択理論 第4章 効率的市場仮説の起源 第5章 資本資産評価モデルの誕生 第6章 経済学における最も確固たる命題 第7章 インデックス・ファンド革命 第8章 オプション評価式の導出 第9章 企業は市場にしたがう 第10章 行動経済学の創始 第11章 合理性仮説への攻撃 第12章 市場に打ち勝つ 第13章 ウォール街の番人 第14章 ラビ経済学からの脱却 第15章 合理的市場の使徒の変節 第16章 ダブル・ノックアウト