合理的市場という神話

フォックス,J.著/遠藤 真美訳
2010年9月23日 発売
定価 3,520円(税込)
ISBN:9784492654361 / サイズ:サイズ:四六判/ページ数:530


ウォール街を支える効率的市場理論は、
いかに発展し、神話となり、限界を露呈したのか。



本書は、金融市場はどのように動いていると考えられるかという問題をめぐる、強力だが欠陥のある一連の理論の興隆と、一部の理論の凋落をつづった物語である。



その中でいちばん有名な理論である効率的市場仮説によれば、市場は情報を完璧に合理的に処理し、資本を効率的に配分する。また、ブラック = ショールズ・オプション価格評価モデルと資本資産評価モデル(CAPM)を信じているのであれば、市場のリスクは計測できて、管理できる。



インデックス・ファンド、現代ポートフォリオ理論と呼ばれる投資アプローチ、株主価値という企業の信条、デリバティブなどの1970年代以降のアメリカで広くみられた金融市場に対する自由放任主義が生まれる一端を、この仮説が担うこととなった。



しかし、2007年夏、合理的市場という理論体系の全体が音を立てて崩れた。それは不滅の真理ではなかったのである。合理的市場理論や株主価値理論は、複雑な世界を劇的なまでに極端に単純化している。そうすることが有益な場合もある。しかし、これらの理論は現実をありのままに記述したものではない。それを不滅の真理とするのは危険な考え方である。



本書で描かれる1世紀にわたる理論の興隆と凋落の歴史は、同時にそれはウォール街の発展の歴史であり、大恐慌から今日の金融危機に至る物語でもある。

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概要

ウォール街を支える効率的市場理論は、いかに発展し、限界を露呈したのか。20世紀初頭のフィッシャーから始まる理論が、象牙の塔から出発し実務の世界へと融合していく100年の歴史。

目次


第1章 大暴落の道化と現代ファイナンス理論の設計者
第2章 ランダムウォーク理論の萌芽
第3章 ポートフォリオ選択理論
第4章 効率的市場仮説の起源
第5章 資本資産評価モデルの誕生
第6章 経済学における最も確固たる命題
第7章 インデックス・ファンド革命
第8章 オプション評価式の導出
第9章 企業は市場にしたがう
第10章 行動経済学の創始
第11章 合理性仮説への攻撃
第12章 市場に打ち勝つ
第13章 ウォール街の番人
第14章 ラビ経済学からの脱却
第15章 合理的市場の使徒の変節
第16章 ダブル・ノックアウト

 

著者プロフィール

ジャスティン・フォックス
Justin Fox

ジャーナリスト。『タイム』誌のビジネス・経済担当コラムニストであると同時に、タイム社のブログ『キュリオウス・キャピタリスト』(www.time.com/curiouscapitalist)のライター、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の論説員も務めている。また、CNN、CNBC、PBSなどのテレビ番組に定期的に出演している。妻子とともにニューヨーク市に在住。

本書は今回の危機を検証した書籍としても評価が高く、ユージン・ファーマが本書の主張に対して効率的市場仮説を擁護するコメントを出し、ジョセフ・スティグリッツが本書の書評の中で効率的市場仮説やファイナンス理論全般を批判するなど、著名な学者も強い関心を寄せている。

遠藤真美   【訳】
えんどう まさみ

翻訳者。主な翻訳に『まっとうな経済学』(武田ランダムハウスジャパン)、『市場リスク 暴落は必然か』『実践行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』(日経BP社)がある。