ターゲットはグローバル富裕層ファミリー
世界第2位・188兆円の富裕層マーケットを攻略せよ!
富裕層やプライべートバンカーへのアンケートやインタビューに基づいた実践的アプローチを紹介。
野村総合研究所(以下、NRI)では、2007年12月に、『富裕層ファミリー』を出版し、当時の日本の富裕層の実態と、富裕層の家族全体に焦点をあてたPBビジネスのあり方を示した。
前著と比較して、本書は次の4点を充実させた。
第1に、2000年代後半以降の富裕層の金融サービスに関する意識や行動の時系列変化を捉えることに力を入れた。特にこの間に発生した金融危機と東日本大震災に関して、富裕層およびPBビジネスへの影響を明らかにした。NRIが2007年から継続して実施している「富裕層アンケート調査」や「富裕層インタビュー調査」の分析に基づき、富裕層の資産の管理・運用の考え方、資産継承の実態、金融機関のイメージや満足度など、PBサービスに関わる富裕層の意識や行動の変化を幅広く捉えた。
第2に、富裕層のニーズや行動の変化を浮き彫りにするだけでなく、金融機関にとってのPBビジネスのあり方を体系的に論じた。そのために、2007年と同様、国内でPBビジネスを展開する主要13社(行)の協力を得て、プライベートバンカー32名に対するインタビューを行った。この調査から、日本の富裕層の意識やPBビジネスの変化と、富裕層が求めるPBサービスに関して、数多くの示唆をいただいた。
第3に、1990年代以降のPBビジネスの歴史を振り返り、PBビジネスの今後の方向性を示した。日本のPBビジネスは、欧米のPBビジネスほど長い歴史はないが、約20年にわたる紆余曲折を経て現在に至っている。2000年前後に起きたシティバンクのPBブームや2005年から2007年までのようなPBビジネスの拡大期もあれば、逆に停滞した時期もあった。また、金融規制の緩和によって、国内の主要金融機関がこのビジネスに参入し、金融グループ化の進展でプライベートバンキング戦略の選択肢が増えた。この歴史を検証することで、各金融機関の今の立ち位置を明らかにした。この分野で10年以上のキャリアを持つ金融機関の幹部と議論を重ね、PBビジネスの将来を展望した。その一部は、終章の「プライベートバンキング戦略の要諦」に対談としてまとめている。
第4に、メガバンク、信託銀行、証券会社、外資系金融機関などの、主に業態や資本構成に
よるPBビジネスの特徴を捉えるだけでなく、金融グループとしての取り組みにも焦点をあてた。もちろん今でもなお、業態や資本構成の違いによってPBビジネスにおける強みや弱みは異なるが、これらを統合して一段高い目線でPBビジネスを確立しようという動きが本格化したことが、この5年間の大きな変化であろう。
本書は金融機関の経営者、企画担当者、富裕層にサービスを提供する担当者やプライベートバンカーの方に、ぜひ読んでいただきたい。また、富裕層を対象としたあらゆるビジネスに従事される方にも参考になる点が大いにあると思っている。(「はじめに」より)