中央銀行

セントラルバンカーの経験した39年

白川方明著
2018年10月12日 発売
定価 4,950円(税込)
ISBN:9784492654859 / サイズ:四六/上/784

1972年に日本銀行入行後、セントラルバンカーとして過ごした39年を振り返りつつ、日本銀行のみならず中央銀行という存在自体の意義や役割を論じる書。

著者が総裁の任にあった5年間(2008-2013年)は内外で大きな出来事が頻発した時期だった。
世界的には、就任直後に発生したリーマンショックに端を発したグローバル金融危機、その後の欧州債務危機があり、国内では、長期にわたって与党の座にあった自民党から民主党への政権交代、短期間での自民党の与党復帰、その間発生した東日本大震災、消費税率の引き上げ論議など、まさに「激動の5年間」と言えるだろう。
それらの局面で著者がどのように考え、何を重視してきたか、判断の根拠となった事柄が理論的な分析とともに語られる。

本書は3部構成となっており、第1部は日本銀行入行後から総裁就任前まで、著者のセントラルバンカーとしてのバックボーンを形成した時期を扱う。バブル経済とその崩壊、日本銀行法の改正など、政策決定の中核とは距離のある立場で当時どのように感じていたか、そして現在はどう分析するかを述べる。
第2部は総裁時代を扱う。経済・金融面で発生したことを各章に分けて、行った決定とその背後にあった判断を振り返り、何が真の論点であったか、著者自身の思いはどのようなものだったかを論じる。
第3部は、第2部までの分析を踏まえて、中央銀行のあり方を中心に望ましい通貨管理制度をいくつかの側面から考察する。第2部までが著者の日本銀行での39年を追う形で進行してきたのに対して、3部はよりグローバルな視点で中央銀行の使命を論じる。

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概要

前総裁が退任後初めて日銀時代の39年を振り返る。物価と金融システムの安定のために中央銀行が果たすべき役割を多面的に論じる。

目次

序章 激動の5年間
第1部 日本銀行でのキャリア形成期
  第1章 日本銀行でのキャリアのスタート
  第2章 バブル経済
  第3章 バブル崩壊と金融危機
  第4章 日本銀行法の改正
  第5章 ゼロ金利政策と量的緩和政策
  第6章 「大いなる安定」の幻想
第2部 総裁時代
  第7章 日本銀行総裁に就任
  第8章 リーマン破綻
  第9章 デフレ論議の高まり
  第10章 日本経済の真の課題
  第11章 欧州債務危機
  第12章 「包括緩和政策」
  第13章 東日本大震災
  第14章 「六重苦」と「通貨戦争」
  第15章 財政の持続可能性
  第16章 金融システムの安定を目指して
  第17章 政府・日本銀行の共同声明
第3部 中央銀行の使命
  第18章 中央銀行の役割
  第19章 非伝統的金融政策
  第20章 国際通貨制度
  第21章 「失われた20年」と「日本の教訓」
  第22章 独立性とアカウンタビリティ
  第23章 組織としての中央銀行
終章 終わりなき挑戦

  あとがき
  文献一覧
  索引

著者プロフィール

白川方明  【著】
しらかわ まさあき

1949年生まれ。1972年東京大学経済学部卒業、同年日本銀行入行。1975~77年日本銀行からシカゴ大学大学院経済学部に留学。経済学修士(シカゴ大学)。信用機構局信用機構課長、企画局企画課長、大分支店長、審議役などを経て、2002~06年日本銀行理事。理事を退任後、京都大学公共政策大学院教授。2008年3月日本銀行副総裁、同年4月~2013年3月第30代日本銀行総裁。2011~13年国際決済銀行(BIS)理事会副議長。2013年9月青山学院大学国際政治経済学部特任教授を経て、18年9月より現職。著書に『現代の金融政策――理論と実際』(日本経済新聞出版社、2008年)、『バブルと金融政策――日本の経験と教訓』(共編著、日本経済新聞社、2001年)がある。